映画を観た帰り、古本屋で
いつものように外の100円の本を漁る。
そこに「寺田寅彦集」というのがあった。
それを持って店内に入って、本の整理をしていた
おばさん・・というより
おばあちゃんに本を渡す。
それを観た途端、おばあちゃん曰く
「これはいい本だよ」
「そうですね」
でもおばあちゃん、奥付の値段を観て絶句。
「100円ですね・・」
僕がお金を払おうとすると・・・
おばあちゃん、曰く
「ちょっと、これは勘弁してもらえませんか」
「わかりました」
僕は、
店を出た。
もし僕が
エッセイストとかコラムニストなら
おばあちゃんと話をして
その本についてとか
100円を付けたのは
おばあちゃんなのか
別の人なのか・・とか
後日、その店に来て
その本がいくらで売られているかを確かめるとかするかもしれないけど
あいにく僕は
エッセイストとかコラムニストではないので
そのまま店を出た。
いまどき
寺田寅彦なら
インターネット図書の青空文庫で読める。
図書館にだってある。
その本の価値は100円が妥当だろう。
恐らく
100円でも売れないだろう。
でも
そのおばあちゃんは
100円で売ることに耐えられなかった・・と思う。
その気持は痛いほどわかる。
自分とって納得できる価格をつけてしまっては
売れない。
自分の価値観が世間から
ズレていく。
でもそれを認めない。
自分自身の価値すらなくなっている、いま・・。
やっぱりこれは、ちょっといい話・・・だろうな・・。