58 「ヒッチャー」  突出した演出力で味わう、愛と恐怖の指入りポテトムービー  | ササポンのブログ

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このレビューは、ネタバレがあります・・。

それにしてもどうしちゃったんだろう?
ロバートハーモン。
この映画の後は、
ロクな映画を撮っていない。

この映画で見せた演出力は、
並みじゃなかった。
新人としては、
もう突出した演出力だったはず・・。

テレビの画面じゃほとんど見えないような闇のオープニングから
やがて、そのなかから、姿を現すルトガー・ハウアー演じるジョンライダー。
乗せてしまうC・トーマス・ハウエル演じる人のいい普通の青年、ジム。
ジョンがその恐ろしい正体の一端を見せ
ジムに
道路に突き落とされた瞬間から
ふたりの恐怖のランデブーがはじまる・・。

突き落とされて、
立ち上がるジョンに
カメラが、グウウウウッと近づく。
むっくりと立ち上がるジョンライダー。
見事に恐怖のはじまりを告げるシーン。
ジョンが、
心の中で舌なめずりをするさまが
ありありと見える。
ルトガー・ハウアーの見事な存在感・・。



そして恐怖の存在を、
車の外に突き落として
ルンルン気分でドライブするジムの目の前に
映画史上、最も素晴らしいホラーシーンが展開する。

僕は、このシーンを観た途端に
椅子に座りなおして、心で正座した。
来たぞこれは・・と思った。
これは傑作に間違いない・・と。
信じられないほどの手際と間。
揺れ動く熊のぬいぐるみの後ろから
ジョンの顔が見えた瞬間、
観客は完全にジムと一緒に
恐怖を体感する存在となる。

あのガソリンスタンドで、
ゆっくりと
地面に落ちる燃えるマッチ。

そして徐々に追い詰められていく
食堂のシーン。

観客が期待している以上の
恐怖の展開が続く。
しかし
冷静に考えると笑える。

ポテトのなかに
指を仕込む、ジョンライダーの姿を想像したら・・。

そのままジムが
指をおいしく食べてしまったら
どうするつもりだったんだろう?

この映画のすべてはジムを追い詰めるという
一点だけに集中している。

そして
彼にあることを認識させるためだけに
すべてがあった。
それは
ジョンを殺すのは
ジムしかいないということ。

だから、ラストに、
完全に警察の手に落ちたジョンが
絶対に逃げ出して
自分を殺しに来るとジムが悟っても
観客は納得できた。
その前に、
警察署全員を、
皆殺しにするという伏線まで張ってある。




これは完全に困ったチャンの恋愛映画です。
もう
愛おしいひとに殺されたくてしようがないわけです。
ジョンくんは・・。
でも、
愛しいジムくんは本気になってくれない。
そんなジムくんを
どんどん困らせ、いじめるジョンくん。
もっと本気になって
本気になって
わたしを愛して殺して!!

途中で出てくる女の子を
あんな風に殺したのも
嫉妬だろう。
当然だ・・。
浮気なんか許されるわけがない。

最後に
願いがかなって
ジムくんと一騎打ちするジョンくんの
なんとうれしそうなことよ。
全身から、
「俺を殺せ!!  早く殺せ!!」
そう叫びながら、
ショットガンを撃ちまくる、ルトガー・ハウアーの神々しさはどうだ!!
そんな彼を
見事に仕留めるジム・・・。

なにも残らない不毛・・・
そう
愛とは
なにも残らない不毛なのだよ。
なんの話だ・・。



本当にどうしちゃったんだろう・・・?
ロバート・ハーモン
ルトガー・ハウアー
C・トーマス・ハウエル ???

かろうじて脚本のエリックレッドが
この後に
まあまあおもしろい「ジャッカー」を監督
その後、傑作ウェスタン「ラストアウトロー」の脚本を書いたが
その後は、
作品がない。

そんなはずはないと思うんだけど・・。
この映画は
並みの連中が作れるような代物ではない。

物語に独自性はない。
よくある話である。
この手のホラーなんて腐るほどある。
だから
リメイクしても
新鮮味などあるはずがない。

この映画の凄さは、なんども書くが
その演出力にある。
そして
それを体現した役者の力だ・・。

唯一、この映画の後も活躍しているのは、
音楽のマーク・アイシャムぐらいか・・。
このひとは、
この後のロバート・ハーモン監督
主演、ジャン苦労どガンダム・・いやちがった
ジャンクロードヴァンダムの
「ボディターゲット」にも
「ハイウェイマン」にまで
付き合ってあげている。
マーク・・・あなたはいいひとだ・・。