祝「怪人二十面相・伝」映画化 北村想戯曲「最後の淋しい猫」 | ササポンのブログ

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ひとを観ていないものを観ます

女   青木さん
青木  えっ
女   あたし、お嫁に行くんでしょ
青木  え、ええ。
女   あたし、アリスなのにお嫁に行くのね
青木  はあ
アリス 不思議の国へは行かないで、お嫁に行っちゃうのよね
青木  ええ
アリス 青木さん、あたし、マフラーを編んだの
青木  マフラー?
アリス そうよ。見て、この赤いマフラー。これね、これ、
    あたしのこの黒い髪の毛で編んだのよ。
    なのに、なのに赤いの、赤くなっちゃたの。まるで血の色みたいに赤いのよ。
    ねえ、どうしてなの!
青木  (取り乱して)血ィッ血ィッ。フー。
アリス (マフラーを投げる)

   暗転

アリス ぐらありぐらあり、ぎいしぎいし
    でも突然、血のしずくがポタポタと
    私の体の中に落ち始めて
    全身が血まみれになるんじゃないかと思っていると
    その血の斑点があっという間にネズミになるの。
    このネズミだけは、こいつらだけには、
    それは恐ろしい生き物なのよ。   
    私の脳を、眼を、唇を、私の胸を、胃袋を、子宮を
    内部から、あの細く鋭くとがった歯で食い破って・・・

六 ア、アリス、わかった。やっとわかったよおれの仕事が
  ゴメンヨ。愛を上げればよかったのに
  焼き芋なんかあげちゃって。
  出せ! ヤロー、ここから出しやがれ。
 






六 雨よ、四十日四十夜降り続くがいい。
  そして百五十日の間、水の地上に氾濫するがいい。
  そうすれば俺は見つけるに違いない。
  濁水に浮かぶアリスの姿を。そして俺はネズミを撃つ。
  一匹残らずネズミを撃つ。
  それがおれの仕事だから。
  アリス、俺たちはけして流れに浮かんだうたかたなんかじゃない。
  もっとはっきりした何かだ。
  そうだ、奴らが血であるのなら俺たちはきっと骨だ。
  骨に違いない。
  目覚めてしまった血ではなく、もう、まったく違う、
  俺たちは、起立した一本一本の骨なのだ。
  アリス、だから俺たちは血のようではなく、骨でつながろう、アリスッ


                           北村想作「最後の淋しい猫」より



文化不毛の地と言われ続けていた。道路は広いから、交通事故死は増えるけど、映画館は相変わらず二本立て。
だけど仕事はあるから、誰もここを出ない。
そんな名古屋・・・。

そこで文化であり続けた、あり続けるひと、北村想。
僕は、
若い頃、彼の演劇しか見なかった。

そして僕が、誰の演劇も見なくなったいま、
彼の世界が映画になる。

感無量というより戸惑っている。

コケなきゃいいけど
危ないなあ・・・

久しぶりに日本映画を劇場で観てみようか・・。


北村想ホームページ
http://homepage3.nifty.com/office-k/index.htm