いまや、社会派の巨匠になってしまったマイケルマンの劇場デビュー作。
もちろんまだ無名の頃で、
ジェームズカーン主演の地味なアクション映画として配給されて
地味に終わった。
僕は劇場では見ていないが、正月の深夜映画で放映されたのを見て、
「おっとっと、こりゃなかなかじゃん・・」
と、目をつけた。
昼はしがない中古車センター経営者のフランクは、夜は天才的金庫破り“クラッカー”に豹変。限られた仲間と己のためにだけ仕事をしてきた彼だが、獄中にある師オクラ(W・ネルソン)のため、危険な“組織”の仕事に手を貸す。アドバイザーに四人の元本職のお尋ね者を雇い、裏稼業の生態を暴き出す。友を殺され、妻子を逃がして家に火を放ち、単身殴り込みに向かう。
内容は、以上の感じだが
主人公が昼と夜の顔があるというのは「ヒート」に似ている。
まあ、正直言って、
この映画というか、これ以降の、マイケルマンのオリジナル脚本に、
あまり魅かれるところはない。
大したことでもないのに、
深刻ぶるところなど、
この後、制作総指揮で
一気に名前を高めるTV「マイアミバイス」ソニーにも見られる
どこかナルシストっぽいところが好きではない。
マイケルマンに関して
評価するのは、
やはりその映像と音楽センスだろう。



とにかく、この映画もTVムービー「ジェリコマイル」もホラーの「ザ・キープ」も、映像が、凝って凝って、凝りまくる。
はっきりいって、その凝りかたが、時には物語を邪魔する時もある。
しかし、その美しさが、
マイケルマンのシナリオの薄さと相まって
ちょうどいい感じになるのだ。
この辺が、ラッセルマルケイなんかとは違うところだろう。



音楽を担当したのは、タンジェリンドリーム。
1976年から活躍するグループで、数々の変遷を経て、現在では主宰者のエドガー・フローゼとその息子のジェローム・フローゼの親子ユニットとなっている。
この映画の前にスコアーを担当したのは、フリードキンのリメイク「恐怖の報酬」。この後に、「ザ・キープ」で再びマイケルマンとコンビを組んでいる。
この音楽が、また凝りまくった映像にぴったり過ぎて、
完全に物語なんかどうでもよくなってしまうのだ。
マイケルマンが、どれだけ有名になっても、
この映画のことは思い出されないらしく
DVDどころか、
ビデオも滅多にお目にかかれない。
幸い、100円で買ったビデオを持っているが、
裏表紙の物語解説のなかに名前はあるが、
単独では、マイケルマンの名前は、記載されていない。
そんな巨匠の無名時代の傑作。
僕は、初期から「マンハント」(邦題「刑事グラハム」)の頃までが好きです。
いまは、やっぱり、普通の監督です。