09年度のベストアドバタイザーは、今年も白い犬のお父さん―。
テレビCMの好感度や宣伝効果の高さなどを調査している
CM総合研究所(関根建男代表)は、「白戸(ホワイト)家」シリーズや
SMAP全員起用などで人気を集めたソフトバンクモバイルを
2年連続で総合1位に選んだ。
19日に都内で表彰式が行われる。躍進企業の部としては
「KY(カカクヤスク)」をキーワードにした西友が1位、
新規参入企業の部では女優・真矢みきが「あきらめないで」と
呼びかける通販化粧品「茶のしずく」の悠香がトップ。
このほかグーグルやグリーといったネット系企業の躍進や、
80年代風の懐かしいCMの作風も目立つ。
◆ユーモアと歌がカギ
ソフトバンクモバイルは昨年度71作品をオンエア。
白戸家シリーズでは、さだまさし、武田鉄矢ら新たな役柄の
人物を次々に登場させ、ユーモラスなストーリーに新鮮さと
広がりをプラスした。
SMAPによるダンスCMも大ヒットとなった。
総合2位は缶コーヒー「ボス」のサントリー、
3位は「一番搾り生ビール」のキリンビール。
4位のロッテはガム「Fit’s」で、「噛(か)むとフニャン」を
キーワードに、独特の歌とダンスで強い印象を残した。
躍進したのは西友。16作品を前年度の9倍にあたる2485回放送した。
「西友にとりあえずいけや~」と外資系家具量販店名を思わせる歌詞の曲に
乗せるなど、低価格をコミカルに表現し、総合順位も459位から
58位と大きく伸ばした。
CM総合研究所によると、昨年度は1971社による9030銘柄、
1万7519作品のCMがオンエアされた。毎月6歳から89歳まで
3000人に対し、印象に残ったCMやその理由、商品の購買意向などを
調査しており、これに外出やテレビの視聴時間などの生活実態調査を
かけ合わせることで、ターゲット層にCMがどの程度届いたかも
調べている。
これらの指標を総合的に勘案したのが今年21回目となる
ベストアドバタイザー賞だ。
◆広告出稿量は減少
一方、長引く不況の影響で昨年度は広告費全体が減少しており、
電通の調べではテレビ広告費も1兆7139億円と前年に比べ
約2000億円減らした。
同研究所の調査でも、CMを放送する企業数、銘柄、作品数ともに
2007年をピークに減少を続けている。
平均すると1人あたり1カ月に4500本のCMに出会うが、
このうち空で思い出せるのは3本程度。
昨年度、何らかの好感反応を得られたのは全体の43・1%だった。
関根建男代表は「それでもテレビCMが人気を博した商品は必ず売れる。
昨年度新たに269社がテレビCMに参入しているのも、その力が
評価されているから。今年に入り、もう一度テレビCMに
力を入れ直す企業が増えてきている」と話す。
◆ネット系企業もテレビに進出
そうした新規参入組の代表格がネット系企業だ。
認知度のアップや会員数の増加などをめざし、07年2月には
「モバゲーTOWN」を展開するディー・エヌ・エーがテレビCMを開始。
08年5月にはSNSのグリーが、今年3月にはミクシィが参入した。
これら3社による今年4月のCM放送回数合計は、携帯電話大手3社
合計の倍近くなっている。
グリーは昨年度1日もCM出稿を休まず躍進企業の部で6位、
検索大手のグーグルは新参入企業の部で4位に入っている。
他方、大手企業もテレビとインターネットの連動CMを次々と
採用している。
その手法も進化しており、「アデランスは誰でしょう?」のクイズCMや、
サントリーの「ほろよい on twitter」など、新技術を使いながら
マス性と双方向性の両方をうまく融合させている。
関根代表は「テレビCMとネットは実は相性がよい。
テレビで広く多くリーチさせて、インターネットで深く伝える。
今後ますます乗り入れが進んでいくでしょう」。
◆「懐かCM」に注目
なお手法に注目すると、特に今年に入ってから、80年代のアイドルを
起用したり、当時の名作CMをリメークしたりと、懐かしさに訴える
作品が目立つという。
サントリーのボスは、「おニャン子クラブ」のオリジナルメンバーが
代表曲「セーラー服を脱がさないで」を披露して話題を集めた。
資生堂の「IN&ON」には荻野目洋子、薬丸秀美ら4人の元アイドルが
登場。
キッコーマンの「幸せって 何だっけ 何だっけ~」や、
森永製菓の「クエッ クエッ クエッ チョコボール」など、
歌詞や歌い手を今風に変えて再登場するものも多い。