雑誌記事をインターネットで有料配信する事業の可能性を探るための
本格的な実証実験が行われ、参加したモニターたちの意識調査の結果が
明らかになった。
電子雑誌を読める端末としても期待が高い「iPad(アイパッド)」の
日本発売も近づく中、「雑誌をデジタルで読む時代」がいよいよ
到来するのだろうか。
「新しいサービスとして今後どうなっていくかに興味がある(95.3%)」
「記事をストックしておきたい(78.7%)」……
モニターたちへの調査結果からは、「雑誌をデジタルで読む」という
スタイルへの期待感の高さが浮き彫りになった。
実験をしたのは、日本雑誌協会(雑協)内の「雑誌コンテンツデジタル
推進コンソーシアム」。
関係の出版社が共同で設けたネット上のサイト「parara(パララ)」を
舞台に、今年1月末から約1カ月間かけて行われた。
抽選で選ばれた約3200人のモニターが参加し、主な出版社から
91誌の記事がネット経由で提供された。
「週刊現代」「AERA」などの週刊誌から「with」「Hanako」などの
女性誌まで幅広いラインアップだ。
モニターはこれらの雑誌コンテンツを、疑似通貨「パララ」で購入。
雑誌単位、記事単位で読んでもらったあと、アンケートや
ヒアリングを行った。
参加モニターの約半数から回答を得て、使い勝手や紙と
デジタルの違いに関する意識などが明らかになった。
その結果、「回答者の約60%は、有料になっても利用意向がある」
「普段紙媒体を購読しない人の約70%に、デジタル雑誌購入の意向が
ある」という傾向が明らかになった。
「FREE(無料)」が当たり前と思われてきたネットの世界で、
雑誌を有料配信するルートが確立される可能性を示唆する結果だ。
そのほか、「ビジネス、一般男性向け、生活情報といったジャンルの
閲覧数が多い」「女性は記事単位、男性は雑誌単位で購入する」
などの傾向も見えてきた。
他方、各社や各誌の記事を集めていく過程で、それぞれのデータの
規格・フォーマットが不統一であるという課題も浮き彫りになった。
同じ出版社の雑誌なのに、印刷会社が違うためにフォーマットが
違っているという例も。
コンソーシアムの大久保徹也議長(集英社)は「(パソコンやiPadなど)
様々な端末での利用にたえうる統一フォーマットづくりの難しさを
再認識した」と語る。
実験結果は今月13日、コンソーシアムの総会で関係者に報告され、
その際、統一フォーマットについての基本的な考え方も発表された。
ただし出版社や印刷所ごとの違いにも配慮し、あくまでも
「デジタル化に取り組むためのガイドライン」だという。
「(業界全体で)早く対応しないと、キンドルやiPadなど海外の流れに
遅れてしまうという議論もあるが、日本の雑誌が持つ特性、
各社の出版文化を残していくのも大事なこと」と大久保議長は語った。
28日にはiPadが発売される。
個々の出版社レベルでも、電子配信への対応が様々に
進み始めている。
ファッション誌を中心に発行している中堅出版社の中には
「いち早く準備に取り組んできたので、iPadの発売が3月、4月でも
用意は間に合った」というところもある。
業界としての統一的な取り組みの一方で、出版社ごとの
多様な対応が広がっていく可能性もありそうだ。
■「parara」参加モニターの調査結果から
・新しいサービスとして今後どうなっていくかに興味がある 95.3%
・記事の内容が信頼できる 75.8%
・雑誌を読む新しいスタイルとして取り入れてもよいと感じた 74.7%
・気軽に雑誌を購入しようという気持ちになる 66.8%
・有料になってもサービスを利用したい 58.0%
・読みたい記事だけを購入できるのがよかった 55.4%