端正な顔立ちとミステリアスな存在感で人気沸騰中の俳優・成宮寛貴が、
この春のTBSドラマ「ヤンキー君とメガネちゃん」で連続ドラマに
初主演している。
「27歳にして金髪の高校生役」と照れ笑いしながらも、デビュー10年目の
節目に射止めた大役への思いは熱い。
映画にCMに役者として活躍する傍ら、そのファッションセンスにも
注目が集まる超売れっ子。
そんな彼を突き動かすものは――。
「おまえ、こんど高校生役やるんだって~」。
今回の役が決まってほどなく、仲の良い小栗旬からこんな電話が
かかってきたという。
「ブチッと電話を切りましたね(笑)。最初はこうやって役者友達に
バカにされると思ったけれど、次第に自分がその年だった頃の、
あの揺れる気持ちや出来事を、いまだからこそ冷静に客観的に
見られるかも、と考えるようになった。あの頃、自分の居場所や
将来の方向性を見つけなきゃと、焦ったり不安に思ったりしていましたね」
自立心が強く、早く世の中に出て働きたかった自分。
勉強嫌いだった自分。
今回の役では、原作マンガにより近づけようと、髪は金髪、
制服は腰パン気味の太めズボンで挑む。
「この髪は役にジャンプできるアイテム。周囲に恐る恐るリサーチしたら、
まあいいんじゃないのとなって、ホッとしました」
演じるヤンキー高校生は「学校一の不良」とレッテルをはられているが、
根は正義感の強いイイヤツ。
仲里依紗扮するヒロイン「メガネちゃん」と出会い、
少しずつ自分の生き方を見いだしていく。
「学校や会社、ご近所。誰もがコミュニティーに属しているけど、
その中で真の仲間や居場所を見つけていくのって、とっても難しい。
金曜夜の放送を家族で見て、月曜日にまた『戦場』に戻ってみよう、
もう一度トライしてみようと思ってもらえたら」
自身も時折、周囲にカンチガイされてしまうことがある。
「思っているよりボクは目力が強くて、いつも眉間(みけん)にシワが
寄ってるらしい。『ナリミヤ、なんかキゲンが悪い』とか思われるんです。
何も考えてないのに。カンチガイって、誰にでもおこることですね」
確かに、くっきりした二重まぶたに鋭い眼光、首を少しかしげる姿は
たまならなくキザでニヒル。
それでいて、ほほ笑む時は表情筋が極めて豊かだ。
この容姿とセンスを買われ、ファッショニスタとしての活躍も目立つ。
自ら厳選した服や小物を集めたセレクト・ショップをネット上に持ち、
昨年末には実際に限定ショップを渋谷に開いた。
ブランドの設ける賞を相次いで受賞、東京ガールズコレクションにも
ゲスト出演して女子を熱狂させた。
が、思いがけないことを言う。
「ボクにとってファッションは、いじめられないための『道具』だった。
転校生で、母親によくラルフローレンを着せられて目立っていたから、
最初は随分やられた。でも、いじめは特技があればまぬがれる。
ならば、オレはおしゃれになってやろうと。アメ横に通いました」
服はもちろん、ケーキをプロデュースすれば「成宮ロール」と大人気に。
いま気になっているのは街角のイルミネーションのデザインだ。
「センス、そしてそれを表現することは様々なことに応用できる。
食べ物も服も、演技も、こんなのを合わせたら、こうアレンジしたら、
と工夫するのが好き。パティシェ、デザイナー……、
自分の中にはまだ何かあるかも、もっと適した仕事があるかもと、
思ってしまうんです」
00年のデビューから10年。
「実は10年もこの業界に居られるなんて、半分くらい思って
いなかったんです。それでも10年やってるから再会できる
キャストやスタッフ、ファンがいると、実感しています。
このドラマを、またこの先の10年頑張っていく勢いにしたい」
締めは、やはり「ナリミヤでした」。
なりみや・ひろき 82年、東京生まれ。
00年に宮本亜門演出の舞台でデビュー、
ドラマ「ごくせん」「イノセント・ラヴ」「ブラッディ・マンデイ」、
映画「NANA」「ドロップ」など多数出演。