「仕事早く終わる。今日飯食いませんか」

いつも通りの必要最小限の内容。記号のような文章。
昨日の夕刻に届いた王様からのメールだ。

あ、ちなみに王様とは、過去数回記事にしたナイスバデーなコピーライター兼映像クリエイターの人だ。
あんまりにも「オレが法律だ!」的な人なので、そのように命名させていただいた。
昨日は私の都合もよく一緒に食事をすることにしたが、こちらが断った場合はそのあとはノーレス。
これぞまさに王者の風格。(・・・なのか!?)

→王様とM嬢のエロスとバイオレンスな関係を知りたい貴方はクリック
http://blogs.yahoo.co.jp/sasami921/6745285.html

彼との奇妙な関係は相変わらず続いている。週に一度位のペースで会いながらも、
男女の進展は一ミクロンもなし。さりとて、ホットな友情が芽生えるわけでもない。
いやー、団鬼六ばりのドロドロの世界を期待していたって方にはスマン!さらっとしすぎてスマン!
やはり私には南仏やエーゲ海の風がお似合いのようだ。ふっ。(と、ジタンの紫煙を燻らす私)

ま、今となれば、言い寄られることもなく、話して得るものもあり、金払いもよろしい、ついでに見た目もよろしい。
これほど一緒に過ごすのに「便利」な関係もない。
うん、枯れた大人としちゃあこんな関係はこれはこれで心地よろしいのだ。

ただ、彼は病んでいた

昨日は王様には銀座の老舗イタリアンレストランに連れて行ってもらい食事をした。
食事は期待通りのスタンダードな味わいが楽しめ、会話もいつも通り軽快に弾んだ。

酒も進んだ頃、ふと何気なく私は「○さんの仕事って夏休みとかあるの?」と聞いた。
すると彼は、「夏休みも何も、・・・今は二日に一度しか事務所に行っていない」と苦々しく言った。
聞くと、ここ最近仕事で精神的に鬱気味になり、現在は医者にも通っているらしい。

マスコミの世界はよく分からないが、大きい賞の発表が近づく今の時期は、
色々な足の引っ張り合いやら派閥争いやらが起こるらしい。そらもうドロドロしとるらしい。
元々過労気味で肉体的に追い詰められていた彼は、その状況で精神にも支障をきたしてしまったようだ。
医者にはしばらく仕事から離れるように言われているらしいが、
元来仕事好きの彼は自宅で原稿チェックをしたり映像の指示を出したりして、
ますます自己嫌悪に陥ると言っていた。

鍛えられた体を持つ彼は、そう言われても見た目にはそれほど変わった様子はない。
が、なるほど言われてみると顔全体がげっそりしている気はする。
長い睫毛が頬に影を落とすため、うつむくと一層彼は病人らしく見えた。

が、それ以外は彼はまったくいつも通りの自信溢れる男にしか見えず、話す調子もいつも通りだ。
現在手がけているプロモーションビデオ制作の裏話を楽しそうに語り、
一緒に呑みに行ったモデルの女達についてユーモラスに語る。

彼の精神状態についてあれこれ詮索したり感想を述べるのはやめて、私は「ふ~ん」と話を聞いていた。
そもそも私がどんな相槌を打とうと、きっと彼には関係ないのだ。
なぜなら彼は相手の反応如何に関わらず、いつでも自分の話したいことを話すだけなのだから。
助けて欲しいわけでもなく、同情を誘いたいわけでもなく、テニスの壁打ち練習のために相手を使うような男だ。

さて、そんな彼が今回珍しく人間らしい(?)発言をした。

食事はたいそう美味だった。彼はたびたび「美味い」と大声で連呼し、店の人に執拗に賛辞の言葉を浴びせた。
終いには何度もシェフと握手までしていた。
可笑しくなって私が「まるで飢餓児が飯を食ったみたいだ」と揶揄すると、彼はぽつりとこう言った。

「最近ずっと、飯を食っても何の味もしなかった」と。
「今回Mさんと食事をして、久々にモノを美味しいと思える感覚が戻った。ありがとう。」
と気弱になるでもなく、気負うわけでもなく、平坦な調子で私に伝えた。

・・・調子狂うわい。
やはり私は彼には王様であってほしい。
いつでも、誰とでも、自分の食らいたいモノをライオンのようにむしゃぶりつき、
自分が開拓した美味い店の話を一方的にしゃべり倒す男であってほしい。
早く彼の精神に平穏が戻るといいと私は思った。


ところで、今回の待ち合わせの場所にて、思わず笑ってしまうような象徴的な出来事があった。

私も彼も「銀座三越前」という待ち合わせ場所に時間通りに到着していた。
が、私達が出会ったのは待ち合わせ時間を15分以上も過ぎた後だった。
なぜか。
それは、私達は待ち合わせ場所に到着しても、ただ立っているだけで相手を見つけようとしなかったからだ。

このように、私達は待ち合わせという場面で「自分から相手を探す」習慣は持ち合わせておらず、
「相手が自分を見つけるもの」という非常に自分本位で傲慢な感覚の持ち主なのだ。お互い。

そんな二人はやはり男女としての相性は最悪なのだろう。・・・苦笑するしかない。