先週の金曜、男女の友達何人かで六本木の某クラブに乗り込んだ。
すでにべろんべろんに酔っている私たちご一行はダンスフロアとは別の一室に席を用意してもらい、
オッサンのようにちびちびとアルコールを体内に追加していた。
私が踊ったら、一躍ヒゲダンスクィーンになってまうからの。オイシイとこ取りは遠慮せな。

なお息を吹き返した男友達は、ダンス階から踊っている女子を数名デリバリーし、
朝方には、私達ご一行は「築地市場近くで海鮮丼を食おう」という話で盛り上がった。
ナンパされた女子1名も私たちの車に乗り込んで来た。布切れが少なくてグッドジョブな装いの女子だ。

はい、これまでがプレリュード。
朝方になってクライマックスを迎えるとっても燃費の悪い一日だ。

乗った車は私の男友達の車だが、彼はいわゆるバカボンで、
大抵の所有物はパパンが買っているという基礎体力の乏しい男だ。
が、生まれたての小ヤギが足を震わせて立ち上がるように、
そんなモヤシっ子の彼も、最近は自力で取り組みはじめた試みがあったのだ。

それは、建築士の免許を取得することだ。
車の後部座席にはそのためのテキストやら壁の資材のサンプル集などが散乱していた。
女子はその資料の上にガードルでヒップアップしているであろうケツをどっかりと下ろした。

そして「ニャアにー?この紙切れ・・・。へへ。私のお尻に轢かれて幸せなヤツめ~
と呂律の回らない調子で言い始めた。

後部座席に座った私と助手席のもう一人の男友達は顔を見合わせた。ちょい気まずい空気
が、泥酔中の彼女は「へええー。何か地味いーな勉強だねえ」「おベンキョーなんてマジメ君じゃああん」など
まったく場の空気を理解せずにペラペラ話を続けた。

ついに運転席の男がキレた
「オメー、その資料に触るな。」「お前みたいなバカ女にナニが分かるんだよ」てなことを怒鳴り出した。
さっきまでそのバカ女といちゃこいて「キミかわいいよねー」とか「今度遊びに行こうよ」と
猫なで声を出していたヤツは誰やねん!・・・とは私も突っ込めない豹変ぶり。

私は彼女が怒ったり泣いたりしちゃうんじゃないかくかと思い、内心舌打ちしながらも場を静観していた。
すると彼女はこう言った。

しょーがないよお。クラブに来ている女なんてこんなモンだよお

シレっと。・・・そしてスパっと。清々しく自然体に言い放った。
最もアンタ自身の口から出るのが意外な一言。しかし最もその場で正しいとも思えるような一言。

しーーーん。
気の利いた言葉も返せない私達と比べると、ケツを動かすことなくどっしりと構えた彼女は
もはや格好良くすら見えた。いや、間違いなく踊っている時の数倍は格好いい。
自分を貶めてまで開き直ったアンタ。アンタ・・・、大バカ者だけど、大物かもしれん。

一方、こっち側のこの気まずい間はなんだろう。虚をつかれて反応に窮する空気。
言いたいコトはいっぱいあれど、言うべきコトが見つからない。
例えると、いわゆる「突っ込みどころ満載」って状態を「どっからツブしていったらええねん」という感覚。

そう、街を歩けば相撲部屋にスカウトされ、腹が空けばその辺の捨て犬にカブりつきそな女子が、
エミリオプッチのチビTを着込み、口にはピンクの薔薇をくわえながら
「あたちがセクチーすぎるから、男がみんな物欲しそうな眼で見るの」ってな台詞を吐いた時。

この衝撃。アゴが外れ、頭の毛が全部抜けそうになる。
全てが間違いでありながらも、全てが正しいような気もする錯覚、混乱、動揺、阿鼻叫喚・・・いっそ踊るか。

・・・もう何が言いたいかさっぱりワカランくなってきた、うん。

気を取り直してあらためて考えると、こういう時の女子って「つえー」、とひしひしと感じた。
こういう時っちゅーのはつまりアレや。直情型ひらきなおり発言する時。それはほぼこの決まり文句を伴う。
しょーがない」ってフレーズ。

「だって、好きになっちゃったんだからしょーがないじゃん」
「ひらめいちゃったんだから、しょーがないじゃん」
「嫌いなモンは嫌~い。しょーがないモン」

この「しょーがない」パワーってスゲえと思う。全てのまっとーな理屈や論理に入る余地を与えない。
言われた方は「しょーがないってオメ・・・」とマヌケに絶句<するか、
「しょーがないってどないやねんソレ!」と負けずに感情剥き出しでシャウトするしかないのである。

弱き者よ、汝の名は女なり。」とシェークスピアは言っている一方で、
美輪明宏は「強い男と弱い女は見たことがない」と言っている。
真実は、貴方の心の中にあるはずだ。泣くんじゃない。さあ、胸に手を当てて考えてごらん。


~男の苦い思いも、甘い思いも断ち切るダンスクィーンの名言~
「しょーがないよお。クラブに来ている女なんてこんなモンだよ」(atパパンのポケットマニーに感謝の車中)


さて。その後はとても海鮮丼を食らう雰囲気でもなく、助手席の男友達と私は新橋あたりで車を降りた。
が、つえー女子は「家まで送れや」とばかりに後部座席にどすんと踏ん反り返ったままだった。

さてさて。そのまた後日談。ていうかさっき聞いたハナシ。ほ・や・ほ・や、ですわよ奥様。
その後、プリプリ怒っていた彼はそのまま彼女をテイクアウト、つまりお持ち帰りしたそうだ。
男の怒りとプライドは、海鮮丼よりフレッシュな女子のボデーにノックアウト、ってオチだったらしい。

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