小さい頃から、父は厳しくて怖い人でした。
妹のことをとても溺愛していて
その様子が私にはどこか気持ち悪くさえ感じていました。
私が中学生ぐらいの時のことです。
会合で酔って帰ってきた父が、
私の顔を見るなり不機嫌な顔になり
何か文句を言ってきたことがあります。
何を言われたかは、はっきり覚えていませんが、
その時の父の怖い顔は、ずっと脳裏に焼き付いていました。
翌朝、母が昨晩のことを父に伝えたのでしょう。
父は覚えていないと言いながらも、
「悪かった」と謝ってくれました。
「これが父の本音なんだ」
「やっぱり私は愛されいない」
という思いが消えず、
私は父を許せないまま大人に。
今年の春、
父は86歳の誕生日を目前に、
突然息を引き取りました。
え?うそでしょ?
ゴールデンウィークには
会いに行こうと思っていたのに・・・
生前は怖い父の顔しか浮かんでこなかったのに、
父の死を知った瞬間、
なぜか笑顔の父に入れ替わっていました。
そして、不思議なことに、
これまでのネガティブな想いが一気に消え、
感謝の気持ちがこみ上げてきたのです。
父とは手を繋いだ記憶も
抱っこされた記憶もありません。
私は冷たくなった父の手を握り
ハグもしました。
葬儀を終えた後、
母から生前の父が私について
どんな思いを抱いていたのか
を聞かされました。
その話を聞いて、
涙が止まりませんでした。
父の本当の気持ちを知ったことで、
過去にこだわっていた私の愚かさに
情けなくなりました。
ありがとうもさようならも言えないまま、
突然旅立った父。
私たち家族のため、
そして地域のために
身を粉にして働いてくれた父。
いつでも家族の幸せを
願い続けてくれた父。
あなたを父として選んで
生まれてきた私には、
どんな使命があるのでしょうか。
これからは、
あなたのようにやりたいことに
チャレンジする人生を送りたいと思います。
また来世で会いましょう。



