先輩のおごり | 次郎風来

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風の吹くまま気の向くままに書きたい
わがままな私のブログ。「詩」が中心のブログです。




 
地方から出て来た、私たち下宿生の多くは貧乏学生だった。
 
友達のところに親からの仕送りが来たと聞けば
わがことのように喜んだ時代だった。
 

そんなある日、先輩が私の下宿に来た。
 
「風来君!食事は終わったかい?」
 
「いいえ、まだですが。」
 
「それじゃ、食べに行こう!今日は俺のおごりだ」
 
「えっ、おごってくれるんですか?」
 
「うん!こうみえても一応、先輩だからな」
 
食堂にはお客さんが誰もいなかった。
先輩と私は長いカウンターに座った
 
「お決まりですか?」
 
「ハイッ! 味噌汁とご飯ね。
  ああっ、それから、ご飯は大盛りにしてください」
 

味噌汁

 

 
「以上でよろしいですか?」
 
「ハイッ!」
 
「さあ、できましたよ、どうぞ」
 
先輩と私は多くを語ることなくもくもくと食べた。
 
私は、具だくさんの味噌汁をおかずに、そしてお醤油をご飯にかけ食べた。だまって食べていたが、先輩の気持ちが嬉しかった。
 
「ごちそうさまでした。」
 
「どうだ? お腹一杯になったか?」
 
「ハイ、ありがとうございます。」
 
お金の無いなかでさえ、私におごってあげようという先輩の心の温かさに、私もいつか先輩のような人になりたいと思った。