蟲収集 | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言

 

 

 

ステージの上には大量のガラス片。
何が壊れたのだろう、今からイベントが始まるのに。
主催者の魔女に掃除を命じられた。
旧式のロボットと共に。
開場時間までに終わるだろうか。



「アトイチジカンデス」
ロボットが言う。
ステージの上手から掃除を開始する。
空のペットボトル片手に?いや、これ終わるかなあ?
疑問に思いながら1.5リットルの空容器を下に向けると、
まるで掃除機のように欠片がどんどん吸い込まれてゆく。
あーさすが魔女。
楽勝かもしれない。
なんて思っていると事態はどんどん怪しくなってくる。



「アトサンジュップンデス」
ロボットが言う。
ステージ上のガラス片はようやく半分片付いた。
ガラスで重みが増したはずの容器にふと目をやると、
そこに蠢くのは、大量の蟲だった。



あまりの恐怖に叫びながら容器を手から落とす。
落とした弾みで、大量の蟲が、
みるみるうちにステージ上に広がってゆく。
「アトジュップンデス」
ロボットがそう告げ、
床に落ちた容器の口を蟲たちに向ける。



再び容器に吸い込まれた蟲はガラス片に戻った。
え、後半分これを繰り返すの?
ガラス→蟲→ガラスを?
絶望的な気分で残りのガラス片を見つめる。
ロボットが言う。
「アトゴフンデス」