「食べられない」 | 何もない明日

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朗読人の独り言

 

 

 

良く知った街の、
行きつけのライブハウス。
のはずなのにその入り口がどうしても見つからない。
そもそも最寄り駅の何口から出るのだったか。
この街の駅には、
200通りもの出入り口が存在するらしい。
という事を擦れ違った韓国の旅行者が教えてくれた。



カムサハムニダー、と言いつつ半分諦めて
とりあえず一番近くの8番出口から街へ出て行くと
出口付近で何やら甘い匂い、ショーケースが並んでいる。
中には極彩色のケーキ、パンに焼菓子。
食品サンプルのように、艶々と輝いている。



食べられるのかなあ、と思っていると
「食べられないって言ったら駄目じゃないか。」と
先輩店員が後輩店員を叱っている。
やっぱり食べられないのか。
じゃあ、甘い匂いは香料か?
と思いつつ目の前の通り沿いを少し歩いてみる。



とあるビルの前に行列が出来ていたので
何だろうと立ち止まると、またまた甘い匂い。
ビルの1Fがドーナツ屋になっているらしい。
表から見えるショーケースに、ドーナツがずらり。
ところがそれも極彩色、食べられるようには見えない。
食べられないのが流行?
甘い匂いの?



まあいいか、ライブハウスに急がなければ。
良く知った街の、
行きつけのライブハウス。
のはずなのにその入り口がどうしても見つからない。
この街はこんなに広かっただろうか。
旅行者ばかりの、
広過ぎる街。