「84ページを開いてください。」
目の前の人物にそう告げられる。
いつの間にか両手の上に一冊の雑誌?
いや違う、どうやら何かの脚本のようだった。
すると目の前のこの人物は脚本家なのだろうか。
「ドラムは出来ますね?」
いえ、出来ません。
「そういう事は前もって言っておいて頂かないと。」
いや、それはこちらの台詞なのだが。
と思っていると不機嫌そうに掌をひらひらさせ、
「まあいいです、84ページを開いてください。」
と煽るので仕方なくページを捲っていく。
82、83、…85ページ?
飛ばしてしまったのかと1ページ戻るが、
83ページ。
「どうしたんですか?」
あのー、ありません。
「何が無いんですって?」
84ページが。
「ドラムも出来なければページも捲れないのですか。」
と勝手に呆れだしたので、そうなんですよ。
と、ここぞとばかりに帰り支度を始めようとしたものの
ここには何も持って来ていない事に気付く。
何も持たずに来たのか。
そもそもここはどこなんだ?
何も出来ないので帰ります、
「それは出来ません。」
出来ないって、何故です?何も出来ないのに…
「これはあなた自身の物語だからです。」
わたし自身の?
「あなた自身のです。」
わたし自身の物語なのにどうしてドラムが?
人違いじゃないですか、タイトルを見せてください。
「タイトルは最期に、付けるんですよ。」
終わってからですか?
「そういうものです。」
一番最期に?
「まずは84ページから。」