が | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言



半分洗剤の匂いの染みついた
シリコンスチーマーをレンジでチンする。
それがメインのおかず。

野菜とチーズ。
冷凍ごはんもチン。

コンロのない生活。



ガスコンロで炙ったカマンベールチーズ、
が出てくるレシピを見ながら火炙りの刑
を連想した自分は最低だと思う。
知りもしないくせに、語感だけで遊びやがる。



実家から調味料やお米、洋服と一緒に
小林ケンタロウさんのレシピ本が届く。
一ページ目を開いて
涙ぐんだ自分も、
最低だと思う。



何も知らないくせに。





眠る前、松本次郎さんの漫画を繰り返し読む。



性交が、どこまでもおぞましく描かれていて、
どのページも悲しい。もしくは淋しい。
少しくらい痛い方が気持ちいいどころじゃない、
そこには苦痛しか存在しないように思える。



電車の中でよく見かけるスマホ画面をいじる人の、
難しい顔とその眉間の皺をなんとなく思い出す。
そこにはどんな辛い事が書いてあるのか。
かわいい女の子だったりすると尚の事心配になって、
でも次の瞬間忘れる。
忘れて電車を降りる。
忘れるから眠れる。
また起きて歩き出せる。