恢塵 | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言





何処までも透き通っていて
煮物の匂いなんかしない
そんな場所に
行きたかったんだろうか



馬鹿馬鹿しい
くそくらえの空想
煮物の匂いじゃなければ
忌々しい黴や塵
饐えたような臭いがするに決まっている



誰もいない
誰もいない場所
そんな妄想の世界に
行きたいわけじゃなかった


指先が触れて
怖くなる
指先が触れただけで
動けなくなる
なんて忌々しい
くそくらえの
温もりに
もっと
触れたくて