A書店の兎 | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言




寒さに震えながらK寺北仲通りを進む
T字路にぶつかる数メートル前の右手
『A書店で謎の兎を入手すること』
と書かれたMEMOを頼りに恐る恐る進む
その通りは昼間なのにやけに薄暗くて
余計に寒さを感じコートの襟を立てる
そもそも本屋で兎って?と訝しがる間もなく
現れたA書店には貼り紙がしてある
『兎、はじめました』
ってもはや何屋なの?
と思いながら扉の前しばし待ってみるが
当然のようにその引き戸は自動ではなく
冷え切った右手を
ゆっくりと伸ばした




宛先 Y
件名 兎
本文


色 焦げ茶に斑紫
価格 ¥977
今ならカチカチ山の兎も付いてきます
兎用着ぐるみを着せた状態での購入
謎の兎だとばれません
餌は二足歩行昆虫のみ
(専門のペットショップ有り)

以上
取り急ぎの報告とさせていただきます
受け渡しは二時間後
I公園の鳥居の前で