hit ball dead | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言




あの人のいる場所まで地上何メートル?
失われた呪文まで、あと何階分?



とあるビルの十三階にその人はいて
言伝を預かった私は途方に暮れている
TEL番もアドレスも聞かされていないので
直接会わなくては
しかし問題がある


あのビルの十二階
あの幽霊フロアの
中央の階段を
突破するための、
呪文を忘れてしまったのだ。
四文字の呪文。
簡単なはずの。


漢字だったかカタカナだったか平仮名だったか
それともアルファベットだったかその他だったか
きれいさっぱり消えた
失われた呪文を、
取り戻すまで待っている時間はない。


一か八か。
と呟きながらその意味を考え出す
一じゃなかったら八?
中途半端じゃね?
とか考えてる時間すら勿体無い、
呪文だ呪文呪文。
取り戻せ、呪文。
階段を駆け上りながら辿る四文字
笹田美紀
カナリア
さよなら
VALS、
滅びの呪文?
あるかもしんないなあ。
と息が途切れだす
三階から四階へ
奥田民生
コーヒー
六階から七階へ
おはよう
JAMP
九階から十階へ
やばいやばいやばい、
万事休すか?
あ四文字熟語?
ひょっとしてこれか?
と懐で鳴り出すケイタイデンワ


件名 呪文
本文 言伝中止


え、これってどっち?


そうして十二階へ