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何もない明日

朗読人の独り言


(目の前の真新しいノートを開く。)



ここにあるのは、ただの断片にすぎない。
それをどういう順序で
どう並べ
どう組み立て、
何と名付けるのか。
それらはすべて、ここから始まる。



(ノートを閉じる)



目の前の真新しいノートを開くと、
一頁目にはこうある。
表には名前の記入欄がある。
空白のままの。
空白の、ままの。


そこに書き込むのは、
『国語学習ノート 2年6組22番 吉田良』
でも
『地学 1-1 笹田美紀』
でも何でもいい。
すべてはそこから、始まった。



「どこに行っちゃったんだろう、あのノート。」



(ノートを放る。)



始まりのノートは、もうここにはない。
ここにあるのは私の記憶。
記憶の中にある私のノート。
破り捨てても、
破り捨てなくてもいい。
それをどういう順序で
どう並べ
どう組み立て、
何と名付けてもいい。
それらもすべて、ここから始まる。



何度でも。
何度でも始まるよ。


今、
ここから。



(ノートを拾い、開いた一頁目を破り捨てる。)



一礼



終演