夕暮れ色に染まるから | 何もない明日

何もない明日

朗読人の独り言

渋いブラウンカラーのランドセルを背負った少年と
パステルピンクのランドセルの少女が手を繋いで通り過ぎる
「ママなんて大嫌いだ。」と真っ赤な顔で
振り向いたあの子の手にママのハンドバッグ


夕暮れに染まる時
カラスも寝床に帰る時間



薬局に薬を買いに行った。


「ぺラックT錠っていうの、ありますか?」
「はい、ございます。
18錠と36錠、どちらがよろしいですか?」
薬剤師が笑顔でこう言うので、
ついつい形のない物の
存在まで聞いてみたくなる。
「愛っていうの、ありますか?」
「信頼っていうの、ありますか?」
「はい、ございます。
18錠と36錠、どちらがよろしいですか?」
薬剤師が笑顔でこう言ったなら、、
私は迷わず18錠を選ぶ


少なめがいいんだ
少なめでいいんだ



青梅街道沿いのヒューレットパッカードと
ドコモビルの中間で巻き起こるビル風に
飛ばされそうになる
息を止めてみる


飛ばされるのではなくて 飛んでみようか
見る前に跳んでみろって誰かも言っていた
飛ばされるのではなくて 飛んでみたいんだ
容赦なく暮れてゆく この空の下で



渋いブラウンカラーのランドセルを背負った少年と
パステルピンクのランドセルの少女が手を繋いで通り過ぎる
「ママなんて大嫌いだ。」と真っ赤な顔で
振り向いたあの子の手にママのハンドバッグ
「ぺラックT錠っていうの、ありますか?」
「はい、ございます。
18錠と36錠、どちらがよろしいですか?」
愛も信頼もぺラックT錠も
私は迷わず18錠を選ぶ
私は迷わず18錠を選ぶ
少なめでいいんだ
少なめがいいんだ



振り向いたあの子の目、そこに映る物が



夕暮れに染まってゆく
カラスも寝床に帰る時間



『夕暮れ色に染まるから』 笹田美紀




笹田の家に遊びに来る人は

必然的に

青梅街道沿いのヒューレットパッカードと

ドコモビルの中間を通ります。



タイトルは『さよならCOLOR』のパクり。

と、自分では思っている。



それにしても、


今日はいい天気だね。