漫画よりももっと漫画的なQWER成功物語 | 我楽多箱

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K-POP関連の気になった話題をスクラップブック的に綴る気まぐれなブログ。

日本のアニメにインスパイアされて作られたガールズバンドが国内主要チャートの

トップ5に留まり、公共放送の音楽番組の1位候補にもなった。彼女たちはYouTuber、

TikTokerなどインターネット配信者で構成された新時代のガールズグループである。

 

 

 

数年前までは想像しにくかったことが韓国で起こっている。それは、初のミニアル

バム「MANITO」のタイトル曲「悩み中毒」で新しい歴史を描いているガールズ

バンドQWERの話だ。QWERのメンバーはチョダン(ドラム・サブボーカル)、

マゼンタ(ベース)、ヒナ(ギター・キーボード)、シヨン(ボーカル・ギター)。QWER

の登場と成功は、新世代のメディア環境の変化とサブカルチャー消費の拡散がエンタ

ーテイメント市場で起こした漫画のような出来事である。

アニメ、J-POP、コンピュータゲーム、インターネット放送など、QWERを構成する

主要な要素は、かつてサブカルチャーを象徴するキーワードだった。しかし、今は

そのコンテンツがより幅広く消費されており、一部の若い世代にはレガシーメディア

が作ったコンテンツよりも親しみやすく受け入れられている。


漫画を見て作ったバンド?


挨拶するキム・ケランとQWER

 

 

QWERは最初から一般的な芸能プロダクションの歌手とは一線を画している。QWER

を企画したキム・ケランは、「フィジカルギャラリー」YouTubeチャンネルの運動

コンテンツで有名なインターネット配信者であり、「偽物男」「ウマゲーム」などを

企画したコンテンツ制作者だ。様々な企画を成功させてきたクリエイターだが、音楽

制作に関する経歴はなかった。しかし、彼は自身のインフラを活用して企画会社

「タマゴプロダクション」を設立し、数ヶ月でQWERをデビューさせた。

プロの企画会社が何年もかけて準備しても、大衆音楽市場での成功は保証されない。

彼がこのような無謀に見える挑戦を始めた理由は何だろうか。キム・ケランにインス

ピレーションを与えたのは、他でもない日本のアニメだった。対人関係が苦手な主人

公がバンド活動をしながら音楽を通じて成長していくという内容の「ぼっち・ざ・

ろっく!」アイドルグループが作られ、成長していく過程を描いた「推しの子」が

代表的だ。どちらの作品もここ数年、韓国のアニメファンの間で大きな人気を博した。

特に「推しの子」はYOASOBIが歌うオープニング曲「アイドル」が国内でもチャレン

ジブームを巻き起こし、知られるようになった。

QWERの誕生期を扱ったプロジェクトのタイトルを「최애의 아이들(最愛の子供たち)」

とつけたことからも分かるように、キム・ケランはインスピレーションの源を全く隠し

ていない。またQWERはバンドのコンセプトだけでなく、音楽でも清涼感のある日本の

ガールズバンドの要素を積極的に借用した。アニメ主題歌やショートフォームコンテン

ツの流行歌を中心に、YOASOBIをはじめ、King Gnu、imase、藤井風などが韓国で

単独コンサートを開催するほど、JPOPに対する需要は着実に続いている。このような

状況でQWERの歌は誰かにとっては親しみやすく、誰かにとっては新鮮な「良い音楽」

であったのだろう。



オンラインの世界には人がいる...いや、メッチャいる!

 

 

 

QWERは制作者だけでなく、メンバーのほとんどがインターネット配信者として既に

かなりの知名度を誇っている。キム・ケランがプロジェクトを始めるきっかけとなっ

たリーダーのチョダンは、チャンネル登録者69万人のYouTuberであり、人気ストリ

ーマーだ。マゼンタもチャンネル登録者51万人のYouTuber兼ストリーマー、ヒナ

(ニャンニョンニョンニャン)はフォロワー410万人を持つTikToker。最後に加入した

ボーカルのシヨンの場合、インターネット配信者ではありませんが、韓国人としては

珍しく日本のアイドルグループNMB48で活動していました。既存のファンが韓国復帰

後の活動に興味を持つのは当然のこと。

キム・ケランと各メンバーのファンは自然に「最愛の子供たち」プロジェクトに興味

を持ち、QWERのファンに流入した。大型企画会社の大々的なプロモーションや放送

露出による認知度上昇とは全く異なるインフラをもとに行われたのだ。テレビに出演

していた芸能人がニューメディアで縦横無尽に活躍し、YouTuberがテレビに登場する

ことが特別なことではないほど、レガシーメディアとニューメディアの領域境界がなく

なった時代だが、ストリーマーが音楽分野でこれほど高い波及力を見せたケースは珍し

い。

個人の能力や知名度も影響したが、それを一つにまとめるには人々が没頭できるストー

リーも大きな役割を果たした。YouTubeで公開された「最愛の子供たち」は、メンバー

の加入きっかけを紹介し、彼女たちが努力する過程を見せ、成長型ガールズバンドの

コンセプトを明確にした。大手企画会社のトレーニングやレガシーメディアの活用が

不可能な状況で、夢を見るクリエイターと新しい挑戦に飛び込むメンバーの出会いとい

う物語を強化し、短期間で2000万を超える累積再生回数を記録した。
 

QWERのアイデンティティを語る時、もう一つ欠かせない要素がゲームだ。ゲームが

YouTuberの主なコンテンツの一つでもあることを考えると、QWERとゲームの高い

関連性は自然なことだ。バンドの名前"QWER"からこれを本格的に表わしているが、

クワーティキーボードの配列である"Q"、"W"、"E"、"R"は、ゲーム「League of 

Legends」をプレイする人なら誰でも知っているスキル発動のショートカットキーだ。

実際に4人のメンバーは、それぞれのスキルの性格に合わせてポジションQ(チョダン)、

W(マゼンタ)、E(ヒナ)、R(シヨン)を担当していることが紹介されている。

逆走突風を巻き起こしたデビューシングルアルバムタイトル「Discord」は、ゲーマー

の間で大衆的に使われているメッセンジャー「Discord」の名前を「不協和音」という

テーマに合わせて再解釈した曲だ。公式ファンダム名"岩蟹"も「League of Legends」

に登場するモンスターの名前から取ったものだ。

ゲームとの関連性からQWERはデビュー後間もなく、グローバル最大のeスポーツイベ

ントである「2023 LoLワールドチャンピオンシップ」(LoLワールドカップ)決勝前夜祭

に出演した。また、韓国最大のアニメ&ゲームフェスティバル「AGF 2023」と一緒に

開かれる「WONDERLIVET STAGE」にヘッドライナーとして名を連ね、独自の領域で

活動基盤を築くことができた。

 

全世界4億人が観戦する超大型大会を持つ「League of Legends」を"サブカルチャー"

と呼ぶことに異論があるかもしれない。しかし、特定のゲームユーザーだけが共有する

コンテンツをグループコンセプト全般に活用することは、決して大衆志向的なアプロー

チとは言い難い。もしかしたら既成世代にとってはサブカルチャーの一種に分類される

ゲームが、QWERがターゲットとする若い世代にとっては主流の文化であると解釈でき

るかもしれない。



最愛の子供たちの地球征服まで


様々なサブカルチャー要素が重なり合ったQWERが大衆に愛されるようになったのは、

メンバーの魅力と爽やかで軽快な音楽そのものの力が大きかった。QWERは今、その

勢いに乗ってファンサイン会は勿論、大学祭、軍隊慰問公演、ポップアップストア、

そしてロックフェスティバルまで活動範囲をどんどん広げている。キム・ケランが

QWERデビュー当時、インタビューで語った「Melonチャートとビルボードチャート

1位」という壮大な抱負の一部はすでに視界に入っている。

しかし、「成長型バンド」には生まれつきついてくる課題もある。歌手として活動

していたシヨンのボーカル、大学で専攻していたチョダンのドラムを除けば、練習

期間が短い分、パフォーマンス能力が不足していること。活動初期はこれから成長

する姿を見せるという抱負で応援を受けることができるが、それだけ発展する姿を

継続的に見せられなければ、ファンを失望させたり、活動領域の限界が露呈する

可能性がある。実際、ニューアルバムではメンバーの参加度が高くなり、成長した

姿を見せたが、「仁川ペンタポートロックフェスティバル」出演が発表されると

演奏力論争が起こり、一部の音楽ファンの間で論争が続いたこともあった。

だからといって挫折するのは早計だ。QWERは根本が漫画とゲームであるチームだ。

彼女たちのモチーフとなった「推しの子」や「ぼっち・ざ・ろっく!」などの作品

をはじめ、漫画では痛みを乗り越える成長物語は欠かせない要素だ。ゲームでも、

終始圧倒的な勝利よりも、危機を乗り越えた後の爽快な勝利がファンを熱狂させます。

自他ともに認めるように、QWERはスタートから予想以上に大きな支持を得ている。

試練もないわけではありませんが、それを乗り越えて成長していく展開こそ、グルー

プのコンセプトに合致した姿ではないでしょうか。今後、彼女たちが目標としている

「地球征服」までの道のりを興味深く見守りましょう。

 

 

(ウーマンドンガ)

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QWERの解説記事が出ていました。マンガに関しては殆ど読まなくなったので題名

だけなら「聞いたことある」程度ですが、日本の様々なサブカルチャーにインスパ

イアを受けた部分の幾つかをQWERのプロデュースに巧みに繋げている仕組みに

ついては理解が進みました。

 

この記事にも登場しているプロデューサーのキム・ケランが仕事の移動中に交通事故

に遭ってしまい頭部、肩部に骨折を負ってしまったとの心配なニュースが飛び込んで

きました。命に別状が無かったのは幸いでしたが、負傷の箇所が箇所だけに経過を

慎重に見極めつつ復帰に向けたリハビリを行うとご自身から動画などを通じての発信

もありました。QWERの活動が順調に軌道に乗り始めている段階なので一番悔しいの

はご本人であるのは間違いないかと思いますが、しっかり回復につとめられて、また

あの出で立ちと軽妙なトークで以て復活する日を待っています。