レジの計算が合わなくて、その額を給料から天引きすることは合法でしょうか?違法でしょうか?
7月20日の日経朝刊から抜粋します。

 


レジの計算合わず給料から天引き 労基法に基づき違法

 

 

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大学生の娘がコンビニエンスストアでアルバイトをしています。レジの計算が合わないと、店側が「罰金」「連帯責任」と称して不足額をそのシフト時に働いている全アルバイトの人数で割り、給料からその分を天引きしているそうです。責任がはっきりしないのに天引きするのはおかしいのではないでしょうか。

 

民法上の原則として、自分の故意または過失によって他人に損害を与えた場合、加害者は損害賠償の責任を負います。店側は特定の店員がレジでミスを犯したこと、そのために発生した損害金額を立証できるのであれば、計算の合わない差額をその店員に請求できる可能性はあります。

 

そのためには防犯カメラの映像を調べる必要があるでしょうが、防犯カメラの解像度で客とやりとりしている具体的な金額まで明確に判明するのかは何ともいえません。

 

では、仮に防犯カメラなどで特定の店員の過失が立証できた場合、それにより生じた損失全額が店員の責任になるのでしょうか?

使用者(店)は労働者(店員)を使用することで自らの活動を拡大し、利益を上げています。日本の判例では業務遂行上の通常のミスから生じる損害は、労働者を指揮命令する立場にあり、労働者を使用することから利益を得ている使用者が負担すべきだという考え方が採用されています。

 

このため、使用者から労働者への請求は「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」においてのみ可能と解されているので、差額全額が店員の負担になることは考えにくいでしょう。

 

店側があらかじめ「レジの計算が合わない場合、店員間で損失を負担する」といった念書や誓約書を差し入れさせていても、労基法は「労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めているので無効です。

 

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