毎朝、NHKの連続ドラマ「わろてんか」を見ています。
私のささやかな朝の楽しみです。
10月30日(月)、主人公・てんの嫁ぎ先(まだ、結婚を認められていませんが…)である米屋・北村屋の番頭さんが、ライバル会社へ転職するシーンがありました。
番頭さんが退職を申出た際、鈴木京香さん扮するごりょんさん(おかみさんの意)が、「これ、持っていきなはれ。今まで世話になった礼。慰労金と餞別や」と言って、札束を渡しました。
このような形での慰労金や餞別って、いわば現代の「退職金」のようなものですね。
いろいろな書籍を読むと、退職金のルーツは「のれん分け」であるとよく書かれています。
退職金について、少し考えてみましょう。
(平易な言葉を用いて書きますので、法律用語から外れますがご容赦ください)
退職金の支払いでよく揉めるのが…
一つ目が…
会社を辞めるときに「退職金をもらえると思ったのに、もらえない」という問題。
「退職金を支給しなさい」ということは、法律(たとえば、労働基準法)には書かれていません。
「退職金を支給するのであれば、その払い方などをキチンと就業規則に定めなさい」とだけ、労働基準法に書かれています。
つまり、退職金を払わなくても、まったく違法ではありません。
また、退職金を払うのであれば、その払い方などを労働契約の際に明示しなさいと労働基準法で謳われています(文書でなくても良いです)。
一度、就業規則や入社した時の雇用契約書などを確認してみるといいかもしれませんね。
就業規則に書かれていなくても「慣行」で、これまでほとんどの人に退職金を支給していると、請求できる場合もあります。
二つ目が…
会社で悪事をはたらいて懲戒解雇に処した人に対して、退職金を支払うべきかどうかの問題です。
規定でよくありますよね…「懲戒解雇相当のことを行った者には、退職金を支給しない」というものが、就業規則の中に…。
懲戒解雇の理由となった悪事の程度にもよるのですが、退職金にはこれまでの慰労の意味合いやお給料の後払い的な性格があるので、それらを全て帳消しにするぐらいの悪事でなければ、退職金の不支給は認められにくいと言われています。
「小田急電鉄事件」という有名な最高裁判例がありまして、とある私鉄(←ほとんど丸分かりですが)の会社の社員が、他の会社の電車の車内で痴漢をし(たしか、2回目)、懲戒解雇に処したうえで、退職金をゼロにしました。
ところが、懲戒解雇は有効であるが、これまで頑張ってきたのだから(つまり、慰労の意味合い)、退職金の3割を支払いなさいという判決がなされました。
懲戒解雇できるからと言って、易々と「退職金ゼロ」にできるわけではないわけですね。
ドラマ「わろてんか」では…
鈴木京香さん扮するごりょんさんは、「ケチケチせんと送り出すのが、わての流儀です」と気前よく、札束を番頭さんに渡していました。
こうありたいものですが、辞めていく人に支給する退職金で大盤振る舞いするのはなかなか難しいのかもしれませんね。
追記:
鈴木京香さんと鈴木保奈美さんのダブル鈴木が出演していますが、このお二人の役どころが逆でも面白かったのではないかといつも思います。