離婚をするとき、年金を分割することができます。ただ、これに関して誤解がある模様です。
8月20日の日経新聞を基に解説します。
ちょっと長いですが、ご勘弁ください。
熟年離婚 妻の取り分は? 夫の年金 全部折半は誤解
ここから
年金分割は年金を受け取る権利を夫婦で分ける。
結婚期間が長ければ分割する部分が増えるので熟年世代にメリットがあるとされる。
多いのは夫から妻に差額の50%を分けるパターン。
ただし、対象は厚生年金(公務員は共済年金)の報酬比例部分だけ。しかも婚姻期間のみだ。
「夫の年金すべてが分割されると思い込んでいる妻もいるが、それは勘違い」と社会保険労務士は指摘する。
夫が自営業などで厚生年金に入ったことがなければ、そもそも分割する年金はない。
ここまで
この記事を読んで、意味がお分かりになりますか?年金って難しいですよね。
ポイントは2つかと思います。
一つ目…。
老齢年金は、老齢基礎年金と厚生老齢年金に分かれますが、対象は老齢厚生年金のみというところです。
例として…
夫の年金を、月額で老齢基礎年金を6万円、老齢厚生年金を10万円としましょう。
妻は、月額で老齢基礎年金を6万円、老齢厚生年金を5万円としましょう。
離婚して分割されるのは、老齢厚生年金だけです。老齢基礎年金はまったく分割されません。
しかも、夫の老齢厚生年金の10万円の半分の5万円が妻へ…ってことはありません。
ここが、ポイントです。
夫の老齢厚生年金10万円と妻の老齢厚生年金5万円を足して2で割ると7万5千円。
離婚時の合意内容にもよるのですが、最大でも夫の年金の2万5千円相当しか妻へ移りません。
夫と妻の老齢厚生年金が、同額となるというイメージですね。
二つ目のポイント。
さきほどの例の中で、夫の老齢厚生年金10万円としましたが、これには夫が独身のときに払った保険料による年金と妻と結婚してから払った保険料による年金とがあります。
年金分割の対象となるのは、結婚してから払った保険料による部分のみです。
この例ですと、夫の老齢厚生年金10万円には独身時の保険料と結婚後の保険料があるわけで、結婚後の保険料による老齢厚生年金は当然ですが10万円より少額です。
結婚してからの妻の老齢厚生年金の額にもよりますが、分割されて妻へ移る年金は2万5千円より少なくなるかもしれませんね。
さて…
この年金分割に対して、夫が亡くなったときに妻に支給される遺族厚生年金の額は、夫の老齢厚生年金の額の4分の3です。
途中で離婚するよりは、最後まで夫婦であり続ける方が多くの年金が支給されるわけですね。
(注)ご理解いただけるように分かりやすく書きました。さまざまな例外がありますので、その点はご理解くださいませ。