2月25日の日経夕刊から抜粋します。


津波犠牲、賠償請求を棄却 「巨大さ、予見困難」

ここから
東日本大震災で、七十七銀行女川支店(宮城県女川町)の屋上に避難していて津波の犠牲になった従業員3人の遺族が、同行に計約2億3500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は25日、請求を棄却した。遺族側は同日、判決を不服として控訴した。

争点だった屋上(2階建て、高さ約10メートル)への避難の是非について、斉木教朗裁判長は「屋上を超えるような巨大津波の予見は困難だった」と指摘。屋上避難には合理性があり、銀行側の安全配慮義務違反には当たらないとした。

女川支店では2011年3月11日の地震直後、支店長の指示で屋上に避難した13人全員が津波にのまれ、支店長を含む12人が犠牲になった。

裁判で遺族側は「屋上ではなく、支店から約260メートル離れた町指定避難場所の堀切山に逃げるべきだった」と主張したものの、判決は「余震が頻発する緊迫した状況で、屋上に避難するとの支店長の判断が不適切だったとはいえない」とした。

また七十七銀行の災害マニュアルでは従来、大規模災害時の避難先は堀切山だったが、09年のマニュアル改訂で新たに屋上を追加。遺族側は、改訂は誤りと主張したが、判決は「人命最優先の観点から、迅速に避難できる場所として合理性があった」と退けた。

その上で、震災前の防災態勢も「従業員に避難場所を周知徹底しており、十分な安全教育がなかったとはいえない」と判断。「企業が最悪の事態を常に想定し、行政機関より高い安全性を労働者に保障すべきだとはいえない」とした。
ここまで


本裁判については、以下の法律の条文によるいわゆる「安全配慮義務」に基づく訴えです。

労働契約法の条文です。
(労働者の安全への配慮) 
第五条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。


この安全配慮義務と言われる義務を怠って従業員が損害を被った場合、会社には賠償責任が生じるというわけです。
企業での過労死や学校でのいじめ自殺などの訴訟でしばしば争点となります。


第一審では会社による安全配慮義務が適切になされたと認められたのでしょう。
控訴審判決ではどうなるのでしょうか。注目したいと思います。


海沿いに位置する会社はもちろん、それ以外の場所に位置する会社でも、この銀行のように有事の際の災害マニュアルをきっちりと整え、周知しておく必要がありそうですね。