- デパートへ行こう! (100周年書き下ろし)/真保 裕一
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所持金143円、全てを失った男は、深夜のデパートにうずくまっていた。
そこは男にとって、家族との幸せな記憶がいっぱい詰まった、大切な場所だった。
が、その夜、誰もいないはずの店内の暗がりから、次々に人の気配が立ち上がってきて・・・。
これは面白かったですねぇ。
まず、全てを失った男が、デパートでの楽しかった記憶に思いを馳せる描写。
これが少なからず私の子供の頃の記憶と共通する部分があり、それだけでもなんかクルものがありましたね。
私も子供の頃、祖父母に連れられてデパートの飲食店でお子様ランチを何度も食べた記憶がありますし、
デパートの屋上で子供の乗り物に乗って遊んだ思い出もあります。
もちろん屋上なので、雨の日とかは営業してないんですよね。
なんか、男のデパートの思い出を読んでると、子供頃の記憶を辿ってしまう自分がいました。
今の子供達はデパートではなく、大型ショッピングモールに行く機会が多いのかな?
大人になって思い出すのは、大型ショッピングモールに連れて行ってもらった記憶なのかなぁ?
ショッピングモールと違い、デパートはフロアが上に伸びているので、子供の頃はエスカレーターで上の階に行くに従いワクワクしたのを覚えています。
ゲームコーナーとか飲食店、屋上の遊び場があるからですね。
で、そんな思い出は置いておいて、
この話は、デパートが閉店してから次の日の朝までの一夜の出来事を描いてるんですが、その閉店後の一夜に色んなものを背負った人間達がそれぞれの目的で、閉店後の真っ暗なデパートの中で動き回ります。
それぞれの人間が見せる、人間模様、感情の動き、それが深夜の明かりの消えたデパートの中で交差し、絡み合い、最後どんな風に着地するのかと、目が離せません。
これぞエンターテイメントという面白さが目一杯詰まっています。
もちろんフィクッションなので、現実にはありえないのですが、
この作品を読んだ後、デパート捨てたもんじゃないな、
本のタイトルのように、久しぶりにデパートに行ってみようか、
そんな気持ちになりました。
理屈抜きで面白い小説だと思うので読んでない人は是非、読んで損はないと思います。