粉飾だらけの医学論文。 | まいうー日記

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医学の世界では、権威のある医学雑誌に掲載される医学論文が非常に重要視されます。それは自分たちの治療や研究がこれらの医学論文に強い影響を受けるからです。医師たちにとって「その治療にきちんとした医学的根拠があるのか」という問いは「ランク付けの高い医学雑誌に掲載された論文にその治療法が書いてあるかどうか」ということとイコールなのです。医師が一般に高度な専門性をもっているというのは、この医学雑誌に掲載される知識や治療法を身に付けているかどうかということを意味しているにすぎません。さてそれらの医学雑誌の中身の信憑性は確かなのでしょうか?

①「製薬会社に不都合な結果は論文として発表されない」

製薬会社がスポンサーとなった研究で、都合のよい結果が出た論文はより多く掲載されます。販売促進に好まない結果が出た場合、医学論文として掲載されることはありません。2004年にアメリカの大手製薬会社メルク社は関節炎などを抑える選択的阻害薬「ヴァイオックス」の長期使用による心血管リスクの増加が確認され自主回収するに至りました。世界80カ国(日本は未承認)で販売され被処方患者は8000万人を超え、史上先例のない医薬品撤収事件でした。この事件をきっかけにアメリカで医薬品の承認に至る科学的根拠となる臨床実験や論文の問題が調べられ、報告されました。その調査報告を要約すると次の通りです。

1:多くの論文が製薬会社スポンサー、または第三者である医学出版ゴーストライターによって書かれており、学識経験者の名を使って出されている。

2:医薬品による副作用や死亡率は、論文などに公表されたデータと製薬会社内の本当の実験データとで食い違いがある。

3:医学論文や学会に公表されるデータに関して、都合の悪い副作用のデータは見かけ上、低くなるような統計処理が行われるのが通常である。

4:製薬会社との利害関係にきちんと言及している論文は半数に満たない。製薬会社に不都合な論文は無視され、科学的根拠は歪められている。

このように医師たちは構造的に製薬会社の都合の悪い研究結果を知ることができないのです。


②「都合の悪い結果は粉飾される」

FDA(アメリカ食品医薬局)が2008年に抗うつ薬の臨床テスト研究について調べたところ、次のことがわかりました。

1:臨床テストで抗うつ薬の効果があったという結果が出た研究38件のうち、37件は医学論文として発表された。

2:臨床テストで抗うつ薬の効果がなかったという結果が出た研究36件のうち、22件は発表されなかった。

3:臨床テストで抗うつ薬の効果がなかったという結果が出た研究で発表された残りの論文も、効果があるとミスリード(誤読)されかねない表現が見られた。

抗うつ薬の臨床テストに関して発表された医学論文の90%は「効果があった」という内容で、そのうち「本当だった」のは半分にも満たないものでした。FDAという製薬会社にひいき目の組織が調べた結果でこれです。医学論文が真実である割合はもっと低いでしょう。


③「都合のよい結果は何度も利用される」

ある研究で製薬会社に都合のよい結果がでると、読者が同じ研究とは気付かないように何度も論文発表されていることが指摘されています。同じ実験の論文とは見破られないように工夫されているのです。なぜこのようなことをするのでしょうか?
最終的に「ある薬が病態に対して効果がある」と結論を出すために、たくさんの医学研究の結果をさらにまとめて解析する「メタ解析」を必要とするからです。都合のよいデータをを独立した研究で得たように装い、重複して「論文生産」することで、それだけよい結果であったという医学研究数が増します。たとえば「オンダンセロトン」という嘔吐・嘔気に対する薬は、同じ研究が5回も姿形を変えて、それぞれ新しい論文を装って重複投稿されています。その結果、この薬はメタ解析で23%も過大評価されていることが判明しました。


④「ゴーストライティング(代筆)」

「医学雑誌に掲載されている著名な研究者たちによる論文の多くは、実際はビッグファーマが雇っている無名のゴーストライターが書いたものだ」と2009年2月11日のCBSニュースが報じました。たとえばファイザー社の「ニューロンチン」という抗てんかん薬に関する論文がそうでした。ファイザー社の子会社が薬の効能を化粧してくれるゴーストライター専門の会社と契約して書かせたものでした。このやり方はファイザー社の大ヒットの商品の抗うつ薬「ゾロフト」でもいかんなく発揮されました。パニック障害から小児愛まで幅広く効くという販促論文81編をゴーストライティングさせました。ワイス社も同じ手口で食欲抑制薬「レダックス」を販促しています。名義貸しをする医師や研究者たちも「お金」には弱いというわけです。


⑤「医学雑誌そのものにバイアスがかかっている」

医学雑誌には論文よりも、薬や医療機器の華々しい宣伝のほうが先に目につきます。この中には利益率の高いゾロ新薬が多数あります。既存の安価な薬剤と同じ作用であるにもかかわらず、新薬だと高い薬価で取引されます。知らず知らずに医療費も高くなってしまうのです。医学雑誌に投稿される論文は事前に「ピア・レビュー」という、同分野の専門家たちの評価を受けます。その評価によって掲載・不掲載が決定します。それらの評価をする研究者たちの名前は一般公開されていません。論文を提出している研究者の名前は知られることを考えると、じつにアンフェアなシステムと言えます。そのシステムに目を付けたのが製薬会社です。評価する側の研究者を買収して自社に都合のよい論文を掲載させることが可能になったのです。

「ランセット」誌の編集者であるリチャード・ホートン医師は言う。

「医学雑誌は製薬会社のためのマネーロンダリングならぬ、情報ロンダリング機関である」