コリンのアパートに着いた。
デイビットは、有無を言わさずコリンの服を脱がした。
コリンは為すがまま、生まれたままの姿にされると、勢いよくベットに倒された。
デイビットの目付きは、裏社会で活躍していた頃のものであった。
コリンは何か言おうとしたが、デイビットの口が塞いだ。
デイビットは、瞬く間の内に、自分の服を脱いだ。
荒々しく、デイビットはコリンの体を貪った。
こんなことは初めてであった。
普段のデイビットは、紳士的にコリンを優しく抱いていた。
今日のデイビットは、まるで別人であった。
「コリンは、俺のものだ。どんなことがあっても、離さない。誰にも渡さない。」
デイビットが、コリンの耳元で何度も囁いた。
コリンも言われる度に答えた。
「そうさ。俺はデイビットのものだ。何かあっても、決して離れない。」
野獣の様に抱かれて、コリンは何ら抵抗をしなかった。
痛みと快楽が交互にコリンを襲ってくる。
寧ろ、この方が良かった。
コリンは、この1週間殆ど寝ていなかった。
寝たと思ったら、2年前に射殺されかけた時の夢を見てしまい、飛び起きてしまうからだ。
起きても、頭を撃たれて意識不明の重体になっているイサオの姿が、ずっと目に浮かぶ。
食欲も落ち、この数日間は殆ど水分しか摂っていなかった。
ほんの少しでいいから、イサオのことを忘れたい。
コリンは、激しく抱いてくるデイビットに溺れた。
時間が経ち、お互い汗まみれになった。
「少し休もう。」
デイビットはコリンから離れた。
「まだ、息が切れていないじゃないか。」
コリンは、ねだった。
「コリンの方が、持たないじゃないか。かなり息切れしているぞ。」
「俺は良いよ。」
コリンの息は絶え絶えだった。
「無理するな。痩せたな。この1週間で、何も食べていないじゃないか。」
デイビットは、痣だらけになったコリンの体を撫でた。
「忙しかっただけさ。所で、俺がブライアンと出来ていたと誤解しているんじゃないか。」
「いや、そんなことは無い・・・。」
「隠しても無駄だよ。顔に書いてあるよ。確かに、ブライアンはかなりの2枚目だ。女は皆イチコロだ。俺も昔、モーションをかけたことがあったが、振られたよ。彼は、ノンケで、巨乳で豊満な女性が好みなんだ。俺なんか目じゃないんだ。それに・・・」
「それに?」
コリンは、デイビットの胸に顔を埋めた。
「君の香りが俺は好きだ。毎日付けている爽やかな香水と君の匂いが入り混じったこの香りが、俺は大好きだ。デイビット愛しているよ。」
コリンはうっとりとした表情をして、デイビットの香りを嗅いだ。
体脂肪が殆ど無い厚い胸板で、周りはサイボーグみたいだと揶揄するが、コリンだけはこの胸板の下に熱い血潮が流れていることを知っている。
「俺もだ。コリンも良い匂いだ。何の種類か分からないが、花の匂いがする。」
デイビットは、コリンを強く抱きしめ、尋ねた。
「どうして、車の中で2人きりで話していたんだ。」
「イサオのことを話し合ったんだ。彼がイサオを撃った犯人を捜す間、俺にイサオを守って欲しいと頼まれたんだ。初めは断ったけど、最後にはイサオを守ることを約束したんだ。」
デイビットは、心の底からホッとした。
でも気になることがあった。
「何故、お前に頼んだ。サラだっているじゃないか。」
「サラを危険に晒す訳にはいかないよ。もしかして、犯人は又イサオを襲うかも知れないんだからね。俺は、イサオにとって弟も同然だ。それに、俺とイサオとブライアンとは、同じ釜の飯を食った仲だし。」
コリンは、しまったと思った。
「同じ釜の飯?どういうことだ。」
デイビットは聞き漏らさなかった。
コリンは覚悟を決めた。
「前に話しただろう。俺が14歳の時、金持ちの愛人になったことを。」
「ああ、聞いた。でも、イサオが金持ちの専属看護師をしていて、彼がコリンを助けたとしか聞いていない。」
「金持ちのボディガード達を纏めていたのが、ブライアンなんだ。14歳の夏の間、俺達は金持ちの邸宅に住んでいたんだ。その夏の終わりに、イサオとブライアンが、俺を金持ちから自由にしてくれたんだ。2人は命の恩人なんだ。」
「サラは知っているのか?」
「知らないよ。イサオはサラに、俺達とはシアトルの病院で知り合ったと言っているそうだ。契約では、あの邸宅であったことは、身内でも語っちゃいけないとなっているからね。俺達も、あの邸宅で起きたことは、サラには言えない。」
「契約?」
「イサオが、金持ちの専属看護師になる時に、交わした契約書だ。イサオは、最初は『家族に秘密』という項目を見て、拒否した。でも、サラの説得でサインしたそうだ。サラは、夫が専属看護師になることで、キャリアがアップすると思っていたらしい。まさか、夫があんなケダモノに仕えるとは思いもしなかっただろう。」
「ケダモノ・・・。コリン、教えてくれないか。14歳の時に何があった。」
コリンは、デイビットから離れ、後ろを向いた。
「お願いがあるんだ。全部話しても、絶対に俺の側から離れないと誓ってくれ。」
「ああ、誓う。さっきも言っただろう、『どんなことがあっても離れない。』と。」
コリンは、17年前の忌まわしい過去を語り始めた。