スキンヘッドの男は、マックスに目配せをした。
外から突然、大きな爆発音がした。
バンの方向からであった。
「しまった。外だ!」
マックスが叫ぶと、電光石火の早業で、2人の男は階下へ降りた。
コリンも後を追う。
2人が外へ出たのに、コリンは台所で止まってしまった。
邪悪な気配がしたからだ。
台所を見渡し、床に敷かれた大きなカーペットを捲った。
地下への入り口があった。
コリンは入り口を開け、中へ降りていった。
マックスとスキンヘッドの男は、銃を構えながら、警戒しつつバンの方向へ近づいた。
バンは激しく燃えていた。
バンの前で、暗視カメラを付けたトビーが呆然と立っていた。
マックスは、銃を下ろして、トビーに声を掛けた。
すると、トビーがいきなり持っていたSIG SG552で、マックスの全身を撃った。
マックスは信じられない表情をして倒れた。
スキンヘッドの男はSIG SG552を撃ちながら奥へ逃げ、トビーに変装した影無き男も応戦した。
コリンは、地下室へ入った。
広くて暗い部屋に、沢山のパソコン、TVが置いてあった。
1人のやせ細った少年が、床に置いてあるマットに横になっていた。
とてもやつれた少年の顔を見て、コリンは薬物依存者かと思った。
「助けて・・・。」
少年はコリンにすがり付いた。
コリンを、自分を助けに来てくれた特殊部隊だと勘違いしていた。
少年を落ち着かせて話を聞くと、男にヘロインを打たれて、ここに閉じ込められていると訴えた。
更に、少年は男の言うままに、CIAとFBIの内部を探っていたと話した。
銃声が地上から聞こえた。
コリンは怯えていた少年を抱え、地上へと階段を上った。
玄関から出た瞬間に、家が爆発し、コリンと少年は吹っ飛んだ。
とっさに、コリンは少年をかばった。
柱の一部がコリンの右足を直撃し、激痛が走った。
家が爆発した時、スキンヘッドの男は影無き男と銃撃戦をし、木に隠れていた所であった。
コリンは死んだと思った。
『俺だけでも、あの男を仕留めなければならない。』
木の陰から、男の様子を伺う。
前方から数十メートルの所にいるはずだ。
辺りは、暗黒に包まれていた。
一瞬、風が横切った。
木の上から飛び降りてきた影無き男は、スキンヘッドの男の首にサバイバルナイフを突き立てた。
スキンヘッドの男の死の確認をした途端、影無き男は地面に伏せた。
足音を聞いた。
まだもう1人いる。
自分を襲った連中の他にいると、察したからだ。
もしかして、あの男かと影無き男は思い、興奮した。
影無き男の思った男とは、自分が2年前に裏社会から追い出した金髪の男であった。
金髪の男も興奮していた。
ようやく、ここを探し当てたのだ。
『今夜こそ、ケリをつけてやる。』
金髪の男は、ゆっくりと影無き男の方へ歩いた。
コリンは激痛で声も出ず、あたりを転がっていた。
少年は怖くなって、おぼつかない足取りで暗闇の中へ逃げ出した。
林の中で、影無き男は、金髪の男と対峙していた。
「やあ、デイビット。久しぶりだな。」
影無き男はそう言うと、サバイバルナイフを取り出し、金髪の男に襲い掛かった。
2人の男が格闘している頃、コリンは激痛をこらえ、燃えるバンの方向へ這った。
マックスの死体を見付け、衝撃を受けた。
影無き男が近くにいるかもしないと思い、コリンは用心深く這って、林の中へ消えた。
消防車のサイレンが聞こえてきた。
「残念だが、今回はこれまでだな。」
影無き男が去った。
金髪の男は、燃え盛る家へ向かって走った。
辺りを見渡したが誰もいない。
消防車が近づいてきたので、金髪の男は急いでその場から立ち去った。