夜中になり、リチャードは母屋へ帰って行ったが、コリンは満足感で一杯だった。
明日はアジトを移動するので、その手順を考えながら、眠りに入った。
明け方、コリンは異様な気配でベットから起きた。
季節は冬であるが、心の底まで突き刺さる冷たさと邪悪なものを感じた。
慌てて服を着ながら、窓から母屋を見た。
母屋は明かりがついていないが、何かか起きていた。
コリンは枕の脇にあったベレッタM92FSを手に取って、倉庫を飛び出した。
数十メートル先に母屋があるが、裏口の前で止まり、ドアから耳を立てた。
何も物音はしない。
だが、あの異様な気配はする。
リチャード、皆は大丈夫だろうか。
大丈夫だ。
リチャードは傭兵部隊に在籍していたし、他のメンバーも武器のスペシャリストだ。
きっと無事で、どこかに隠れ、あの気配と戦おうとしているのだ。
コリンは、自分を落ち着かせた。
周囲を見渡して誰もいないことを確認したコリンは、裏口のドアをそっと開けた。
日が昇りかけてきたので、中は少し明るくなっていた。
誰もいないことを確認し、サッと中へ入った。
ガソリンの臭いがした。
母屋は、閉店したバーをリチャード達が改造したもので、裏口は厨房へ繋がっており、ベレッタM92FSを構えながら、ゆっくりと前進した。
厨房のドアを開け、カウンターの中へ出た。
カウンターは誰もいなかったが、酒瓶が割られ、床一面がガラスの破片だらけだったので、コリンは破片を避けながら進んだ。
カウンターを抜け、広いフロアへ出た。
リチャードが居間に改造していたので、ソファやTVが置いてあったが、コリンが昨夜に片付けたままになっていた。
だが、人の気配がする。
コリンは、玄関へ進んだ。
フロアのドアを開けると、玄関ホールでリチャードが血まみれで倒れていた。
慌ててコリンは、リチャードのもとへ駆け込んだが、事切れていた。