身なりの良い男が、休日を利用して田舎の町へやってきた。

目的は、隠居した父親を訪ねるため。

父親は長年都会のレストランでシェフとして働いていたが、1年前に妻を突然の病で亡くした後、店をたたみ山に囲まれた田舎町へ引っ越した。

男にとっても母親を亡くし、一人で暮らす父親が気掛かりであった。

山荘で暮らしが半年になる父親は、自給自足の暮らしに喜びを見いだしていた。

精悍なシェフから、穏やかな仙人の様に雰囲気が変わった父親に会い、少し戸惑う男。

そんな男に、散歩に誘う父親。

男は、父親と歩くことにした。

父親が案内したのは、山の間にある小さな入江。

男は、この町は山しか無いと思っていたので、驚きつつも父親と浜へ座り、海を眺めた。

二人は多くを語らなかったが、海を見つめる内に互いの心は癒され、通じるものがあった。

父親の生活に安堵した男は立ち、父親に別れを告げて、都会へ戻って行った。