トップガン マーヴェリックが教えてくれること | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!


日本ではバブル経済真っ盛りの1986年に公開された「トップガン」を私が観たのは22歳の時だ。

その続編にあたる「トップガン マーヴェリック」が36年の月日を経て公開された。

トップガン公開時のトムクルーズは23歳で今は59歳というが、彼は歳を取らないのだろうか!?

 

59歳のトムクルーズがカッコよすぎてそれだけでも涙が出てくる。

 

初代トップガン公開時にはまだ生まれてすらいなかった若い世代が観ても、バブル期に青春時代を送った親世代が観ても号泣するほどの見事にエモい映画に仕上がっている。

 

おそらく今年公開の映画の中ではトップの興行成績を残すと思われる大ヒットぶりだ。

 

この映画の何が良かったのか?

 

初代トップガンのオープニングとほぼ同じ感じの空母上の戦闘機離着陸の映像が前作と同じBGMで流れた冒頭のシーンだけで既に私などは胸が熱くなったが、この映画(マーヴェリック)の感動的な部分は単に我々世代が感じるノスタルジーだけではない。

 

前作公開時にまだ生まれてすらいなかった20代30代が観ても感動できる、世代を超えた感動を与えてくれる見事な作品となっている。

 

今は亡き前作の監督「トニー・スコット」が本来ならこの続編も監督していた筈だったようで、トニー・スコットへのトリビュートも多く含まれる。

 

エンドクレジットでは、「In Memory of Tony Scott(トニー・スコットを偲んで)」とメッセージが記されるが、トニースコットにも誇れる作品に仕上がっている。

 

基本的に、この映画は戦争の道具である戦闘機とそのパイロット、戦闘機による軍事作戦を取り上げた極めて好戦的な映画だとも言えるが、前作今回作共に戦争映画色は意図的に薄められている。

 

初代トップガンが公開された1986年には、まだソ連(ソビエト連邦)が存在し、劇中に登場する敵の戦闘機もミグというソ連の戦闘機名が使われていた為、米ソの戦いという印象はあった。

F14トムキャット対ミグ28というマイナス4Gを可能にする架空の戦闘機のドッグファイトが当時の米ソ間での最新鋭戦闘機とパイロットの能力バトルというスポ根的な要素を醸し出しており、それは今回も踏襲されている。

 

前作における仮想敵国ははっきりしておらず、敢えて言うならインドかパキスタンあたりではないかと言われているが、中東っぽい謎の仮想敵国という扱われ方だった。

 

今回のマーヴェリックにおいても、ロシアのスホーイ(Su-57)っぽい第五世代戦闘機が登場するし、敵地もロシアっぽい感じではあるが、敢えて敵国は曖昧にしてある。

 

しかし、劇中で前作同様マーヴェリックが着用していたジャケットに台湾国旗のワッペンが貼られていた事に激怒した中国共産党がこの映画を中国国内で無期限上映禁止にしたという話もあり、アメリカ以外で第五世代戦闘機を配備するロシアと中国からすれば微妙な設定だったと言えるかもしれない。

 

また、ロシアによるウクライナ侵攻や緊迫を強める台湾情勢という予期せぬ背景から、このタイミングでの公開は、この作品の製作意図に反して色々な妄想をかき立ててしまう。

 

それでもこのトップガン マーヴェリックがこれほどまでに感動的な作品に仕上がっているのは、戦争の道具として開発され、進化し、その操縦技術に命を賭けてきたパイロット達の情熱やチームワーク、友情や愛というものにストーリーがフォーカスされているせいだろう。

 

また、戦争の道具として開発されてきた戦闘機という兵器も、時代の流れと共にデジタル化が進み、徐々にパイロットの技術に依存しないスペックに変わり果ててきているというある種のノスタルジーが表現されており、36年という月日を経て、かつてのトップガンである今や老兵マーヴェリックと旧世代のF14トムキャットが大活躍するシーンは感動的以外の何ものでもない。

 

また、前作で登場したGPz900Rニンジャが今作でも冒頭では登場するが、途中から最新のH2に変わっていくところにも、さりげなく老いた自分に対してマシンの進化に感じる哀愁と、そのただの機械に対する思い入れのようなものが感じられてエモい。

 

人間は老いていくが、マシン(機械)は老いず、しかも進化していく。

しかも老いた人間も、現在の最新技術で進化したマシンに乗ることができる。

その進化したマシンは、かつてほどの技術を要求せずにより高度な性能を発揮する。

それでも、老兵にとって乗り慣れた旧機のほうが愛着を感じるものだ。

私も(自分が乗っているせいもあるが)GPz900Rニンジャのほうが好きだ。

 

 

今回ジェニファーコネリー演じるヒロイン役のペニーの愛車はポルシェ911だったというのも憎い演出だ。

前作では、ケリーマクギリス演じるエロすぎる航空物理学博士チャーリーことシャーロットの愛車は当時でも既にビンテージなポルシェ356スピードスターだった。

ピート(マーヴェリック)の彼女は常にビンテージポルシェを愛車にしているという設定なのだろうか?とも思えるが、これは明らかに前作で粋な小道具として登場した356スピードスターへのオマージュだろう。

 

マーヴェリックの愛車はカワサキ・ニンジャで、愛機はF14トムキャット、彼女のクルマはビンテージポルシェという設定だけで、男の子の心をくすぐるには十分な演出だ。

 

マーヴェリックというキャラクターの存在は、前作でも今作においても、永遠に変わらない「男の子」という生き物を象徴している。

 

これまたネタバレだが、冒頭でマーヴェリックが「ダークスター」と呼ばれる架空の試験用極音速機のテストパイロットをしていてマッハ10を目指すという映像的にすさまじい迫力があるシーンが導入されているが、そこでエド・ハリス演じるケイン少将がマーヴェリックに「近い将来、パイロットは必要なくなる。」と言うが、マーヴェリックは「でも、今日ではないです。」と答える。

 

「ダークスター」のモデルとなっているのは、かつてマッハ3を記録したブラックバードSR71のようだ。

SR71はロッキード・マーティンで1960年代に開発された機体で1998年に引退済みの過去の遺物であり、現在はSR72という無人機が2025年の初飛行を目指して開発中とのことだ。

 

このシーンにおいて、有人による極音速機の開発など、もう時代遅れで不要だと言い放つケイン少佐の皮肉に対して、命令違反を犯して無許可でテストに挑むマーヴェリックの姿は、デジタル技術の進化によってパイロットすら不要になりつつある時代の流れに立ち向かう侍スピリットが感じられ感動的だ。

 

過去30年間のデジタルテクノロジーの進化は、性能に優れたマシン(機械)を生み出してきたものの、相対的に人間の能力のポテンシャルを下げてきたような気もする。

 

もし、携帯電話やスマホが開発されていなければ、人は既にニュータイプに進化していたかもしれない。

 

かつての恋人ピート、かつてライバルだったアイスマン、かつての相棒グースの息子ルースターなど、前作から繋がりのある人間関係がくりなす人間ドラマも見事に描かれており、36年という月日をかつてトップガンを観た私の世代が経験してきたように、主人公のピートも経験し、マシンや環境は変わってしまったが、人間の絆はその人間がこの世を去った後もたゆまなく引き継がれ変わらず存在するということを教えてくる。

 

そしてその絆の中に介在し、生きている限りつきまとってくる確執や業を乗り越えていかなければひとは成長できないアナログな生き物なのだと知って涙がでるのだろう。

 

そんなことをこの映画で教えてくれた監督及び制作スタップ、そしてトム・クルーズに敬意を表したい。