「情報の非対称性」についてもう一度書いておきたい。
英語では「asymmetric information」というらしい。
この「情報の非対称性」ということを私に教えてくれた友人(KT氏)は、昨年亡くなっており、もうこの世には居ない。
彼とは、10年位前に飲んだ勢いで今後10年以内に日本経済が破綻するかどうかで1000万円を賭けて、まだ破綻していないので私の負けだが、もう払わなくて良くなってしまった。
投資の世界に於いては、売り手と買い手(投資家)の間に圧倒的な「情報の非対称性」があることによって、ほとんどの人は売り手側に騙されて、結果として損をするといわれる。
そのことが顕著に表れているのは金融業界全般だが、特に「不動産業界」と「保険業界」には注意した方がよいかもしれない。
あと、普通は騙されるとは誰も思わないが、医師や弁護士、税理士といった特定のエリアで専門知識と国家資格を持った人たちは、その気になればクライアントを手玉に取ることは容易だ。
経営のプロである経営者が、社員を手玉にとって奴隷化することが容易であるというのも、富裕層が自分たちだけ得られる情報を元に情報弱者である一般人(貧乏人)から搾取しやすいというのも、この情報の非対称性を悪用した例と言えるかもしれない。
この「情報の非対称性」に買い手側が対抗する手段は、中古車市場を例にとって以下のように言われている。
1)そのような市場には決して手を出さない
2)瑕疵がある前提でむちゃくちゃ値切る
3)売り手と同じ情報を得ることによって、情報の非対称性を是正する
投資商品は値切れないので、投資しないか、売り手同様もしくはそれ以上の知識と情報をえるしかないということになる。
幸か不幸か、オフショアの金融商品を取り扱う人たちは、それほど専門的な知識を持っていない場合が多い。
なので、本来はオフショア投資の世界において、この「情報の非対称性」によって騙されるリスクは実は低いと言えるかもしれない。
ただ、売る方も知識はないが、売られる方はもっと知識や情報がない(殆ど何も知らず聞いたこともない)ため、大した情報を持っていなくても「情報の非対称性」を発生させやすいという売り手のメリットがあり、多くはそれを悪用している。
また、「情報の非対称性」の悪用を暴くために自分が理論武装するための正確な情報も少なく、どこにあるのかさえ分らない。
結果として、詐欺的な営業が横行しやすい環境があるということになるが、その決め手となる要素は、売り手側の自分を信用させるカリスマ的イリュージョンかもしれない。
カリスマ的イリュージョンにかかってしまえば、情報や知識というものはほぼ無力化されてしまうので、そのひとが良いというものは良いし、買った方が良いものは買うしかなくなる。
おおよそ天才的な営業マンは、何でも売ることができるというが、その悪魔的な能力はほぼイリュージョンの世界であり、圧倒的な情報量と専門的知識がもたらす「情報の非対称性」よりも恐ろしい力を持っている。
いわば転生者が獲得するユニークスキル:「洗脳」みたいなものだ。
これに対抗できる手段は、今のところ、どんな人だろうが全て「人間の言うことは信用しない」というくらいの根性と気合か、ユニークスキル:「洗脳」を無力化するユニークスキルを獲得するしかないだろう。
しかし、純粋な「情報の非対称性」の悪用であれば、自分も努力をして多くの情報を複数のソースから集めることによってある程度は防ぐことが可能だ。