ITAが提供するS&P500/MSCI連動の元本確保型商品は詐欺なのか!? | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
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リブログさせて頂いた以前の記事のコメント欄で、インベスター☆トラス☆のS&P500インデックスという商品に付随する元本確保オプションが「論理的にあり得ないヤバいものだ!」という議論が以前あり、そのことについて記事として書きたいと思っていましたがなかなか書けずにいました。

 

個人的にもこの議論はなかなか興味深く、何度も直接ITAの担当者から説明を受けていますが、私の脳みそがウニ化しているためか、議論の焦点がかみ合っていないのか分かりませんが、いまいち釈然としないまま今に至っています。

 

ITA(インベスター☆トラス☆)が提供するS&P500/MSCIインデックスという積立の商品には契約期間10年の場合100%、15年で140%、20年で160%という満期時に仮に時価総額がそれを下回っていた場合にでも元本に対して該当する%の償還を保証するオプションが付いています。

 

※これは、満期まで一度も支払いを停滞させず、減額も引き出しも無かった場合に限られます。

 

ITA社のオフィシャルな日本語版目論見書には以下のような元本確保に関する注意書きが書かれています。

https://www.investors-trust.com/jp/products/product-family/sp500/

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元本確保にはロイヤルティボーナスも含まれます。猶予期間内の拠出があり、減額や一部解約がない場合のみ元本確保が適用されます。本商品は、高格付金融機関が提供する仕組債により元本確保されます。投資家はこれらの発行体である金融機関/カウンターパーティリスクを負うことになります。これらの金融機関が支払不能状態に陥った場合には、投資家の資本の一部または全部が失われる可能性があります。

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この商品をご存じの方は、この商品がS&P500/MSCIインデックスに連動する「仕組み債」に投資される商品だと理解していると思います。

 

では、投資家が実際に積み立てで買っているものは仕組債そのものなのでしょうか?

 

要は、もし、投資金が100%S&P500やMSCIに連動する仕組み債に投資されるのであれば、「仕組み債という商品の構造上、元本を確保(保証)できるわけがない」というのが議論の焦点だと思われます。

 

通常仕組み債で何らかの条件付き保証があるのであれば、ノックイン価格の設定があるはずなのですが、この商品に関してはノックインオプションがあるのかないのか?ノックイン価格はいくらなのか?は公開されていません。

もしかするとノックイン型ではないのかもしれませんが、だとすると仕組み債としては連動するS&P500やMSCIの指標のダウンサイドの変動に対して何の保証もないということになります。

 

あくまで、この商品における条件付きの元本(利回り)を保証するというオプションは、プロバイダーがその利回りを保証するという条件を提示しているだけであって、運用成果が運用の仕組み上保証された構造を持った仕組み債というわけではないようです。

 

つまり、商品そのものの構造が、元本確保型の構造をビルトインした商品というわけではなく、ITAという会社が、計算上高い確率で元本を確保できる構造を作り上げ、ITAという会社がそれを保証している(・・・と謳って販売している)のだと私は理解しています。

 

その上で、詐欺という言葉をこの会社や商品に対して使うのは適切ではないと思います。

 

そうなってくると、ITAという会社自体の信頼性や資産状況、預かり資産の管理状況、カストディアンバンクの信頼性というものを議論しなくてはならなくなってきますが、少なくとも15年以上はこのような保証を実現している実績のある会社であり、今のところその保証は成り立っているというのは事実です。

 

私の個人的見解を言いますと、この商品やそれを提供している会社は詐欺では無いが、S&P500やMSCIといったインデックスに連動していながら元本を確保できる仕組みは、「統計的継続率の低さ」に依存している部分が現実には大きいと思います。

 

日本国内の生命保険会社が提供している変額年金なども5年間の継続率は50%程度だと聞いています。10年とか15年で見れば、継続率は30%を確実に割ってくることでしょう。

 

これはあくまで全体の統計値ですので、自分はそんなことはないと思われる方には関係の無いことですが、現実に15年などの継続を最優先して最低投資額の月額US200ドルでやっておられる方の2年以内の破綻率は想像以上に高いというのは事実です。

 

RL360のクアンタムやRSPを500ドル以上で契約している方の場合は遥かに継続率は高くなっています。

 

つまり、この元本確保型といわれるインデックス連動型積立プランは、構造上は元本を確保する仕組みを持っていなくても、結果として非常に高い確率で「最後まで継続したひとには保証されている利回りを提供できる」というのはややインチキ臭いですがそれが事実ということになります。

 

なぜなら、元本の保証なり、利回りの保証といったものを享受できるひとは、この統計的継続率からすると実際には殆どいないからです。

解約しないまでも契約期間中に積立の停止や減額、一部引き出しなどをする契約者全てを「保証の脱落者」とすると、残念ながら15年後の生き残り率は10%も無いかもしれません。

 

果たして、そのような統計的な予測に基づいて利回りや元本の保証といったものを謳った商品を提供することが詐欺に当たるかどうか?ということになると、個人の感覚的な議論にならざるを得ない気はしますが、結果として15年継続すれば、仮にS&PなりMISCなりの指標がその時にマイナスであっても、元本の140%が実際に支払われるとすれば詐欺やインチキとは言えないような気がします。

 

たとえば、生命保険というものは、被保険者が死亡すれば保険会社の保証する額の死亡保険金が支払われる金融商品ですが、これは全てのひとがいつかは死亡するという統計に基づいています。

 

そして、保険会社の統計で、加入希望者が(この先10年くらいの間に)死亡する確率というものがはじき出され、保険会社の統計上死亡確率の高い人、つまり加入されると保険会社が損をする確率の高い人は保険に入れないというのが当たり前ですが、これも統計に基づいて保険会社が損をしたり破綻したりしせず、保険金をちゃんと約束したとおりに支払える仕組みと言えますが、同様に理不尽というかインチキ臭い感じは無くもないです。

 

例えば、今回のコロナ問題のような地球規模のウイルス感染の拡大により、全人口の90%くらいが死滅するような事態になれば、どんな生命保険も機能しないでしょう。

 

そもそも投資商品という飛び道具に安全や安心、元本の保証、確定利回りなどを求めるくらいなら投資をしない方が本当は良いのかもしれません。

 

ただ、現実には今のように経済の先行きが不透明な時にはITAのS&P500や、香港の生命保険会社が提供する確定利回り付きの養老年金や、クーポン商品に人気があるというのは事実です。

 

その理由としては、単に売りやすいから多くの人がそれを勧めるという事に過ぎないような気はします。

商品そのものの構造や、提供している会社の信頼性よりも、販売してはならないものを販売(斡旋)する営業的な部分により深い問題があるように思われます。

 

RL360(ロイヤルロンドン)のRSPやITAのエボリューションのように、ファンドの価値が日々変動することによって、運用時価総額が必ずしもプラスにならないような商品と比較すると、ある種の利回り保証が付いたS&P500/MSCIインデックス積み立てや、保険料の払い込みから一定期間過ぎれば、解約返戻額が支払総額を割らないような香港サンライフのライフブリリアンスといったホールライフ型生命保険やVISIONのような確定クーポン付き商品、Flexiretireのような確定利回りの付いた養老年金商品が、勧める側からすると、あとで運用が悪いとか文句を言われることもなく売りやすい手離れのよい商品と考えられます。

 

しかし、ここで冷静になって考えてみると、「経済の変動期にはよりリスクの低い投資商品を勧める」という販売側の理論は、いくらリスクが低くても、インフレ率やドル円の為替と言った予期できない全てのリスクをカバーできるものではないので、所詮投資家にとっては気休めに過ぎず、手数料ハンターたる販売者にとってはその時に最も売りやすい商品を如何にタイムリーに効率よく売り込むか?という完全に売り手側の都合に基づく論理で、投資家目線ではないと言えます。

 

最終的には、投資家の嗜好性と判断に委ねられる問題でしょうが、保証の有る無しやリスク度合い云々以前に、「卵は1つのかごには盛れない」ということは知っておいたほうが良いでしょう。

 

それが如何に安心安全っぽい商品であったとしても、それだけでしかやっていないというのは、やはりリスクはあると考えられます。

 

同じITAの積立商品であってもエボリューションや、マン島RL360のRSPというファンドを選択して積み立てて行くラップ口座タイプの商品を月に1,000ドル以上20年以上積み立てられる資力があって、それとは別に比較的地味な運用だが安全なものも選択しておくという考えが可能な投資家に、なけなしのカネを安全っぽいものに一点がけする小市民は所詮勝てない運命なのかもしれないと思うと悲しい現実ではあります。

 

ましてや、現在契約しているフレンズやRL360を解約して、保証のあるITAのS&P500/MSCIに乗り換えるなどという考えは間違ってもお勧めはできません。

 

そんな安易な考えに乗る人が、乗り換えた商品を満期まで継続出来る可能性は極めて低い感じがします。