パナマ文書(Panama Paper)から見る不公平な世界 | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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パナマ文書については先日のブログ記事『パナマ文書流出事件の本質』での触れたが、もう少し補足して起きたいと思う。
http://ameblo.jp/saruahi/entry-12147684363.html

パナマ文書流出事件がトップニュースにあがった直後の4月14日に、観測史上希に見る熊本地震が発生し、日本では地震速報とその報道によってメディアのネタは埋め尽くされてしまった。

パナマ文書流出事件も、世界の金融市場を揺るがし、国際政治にも影響を及ぼす巨大地震ともいえる人為的な事故だったが、日本でにおいては、現実に目の前で人々が甚大な物理的被害を受けている熊本地震に比べれば、国内メディアの報道意義は比較にならないほど小さくなったに違いない。

それでも相当数の、まったくオフショアやタックスヘイブンに関わりのない、そして無知な一般の人々の記憶には漠然と金融の世界におけるタックスヘイブンの闇というものが、小説や映画の世界の世界だけでなく現実に存在するということ。そして、それが縁のない自分たちにとっては非常に不公平なものであるという印象を受けたであろうと想像できる。

香港の金融界においても、この事件がタックスヘイブンの投資商品やスキームに関わる自分たちのビジネスにとって、間違いなくネガティブな影響を及ぼすだろうとの見方が一般的には強いように感じられる。

その一方で、現実にタックスヘイブンの裏金融世界に関わる現場の人間には、思ったほどの危機感はないようだ。

彼らは、もともと存在している表金融と裏金融の不公平なひずみを理解し、その中で彼らなりのガイドラインを守って生きてきた強者達だからかもしれない。

この世には、膨大な資金を保有する悪が無数に存在し、そして彼らの資産は増え続ける。

タックスヘイブンの金融機関が持つ情報をいくらガラス張りにしたところで、本物の悪が、今回のパナマ文書の流出などで表に出ることは無いだろうし、それを排除することもできない。

巨大な悪は「誰の目にも正義だと映る衣をまとっている」。

今回の件も、本物の巨大な悪がおそらく情報を流出させたと考えるのが妥当だろう。

巷では、このパナマ文書の公表が、「真面目な納税者が報われる方向に国際社会を動かすことになるだろう」との意見もあるが、まったくふざけた話しとしか聞こえない。

いったいこの世のどこに真面目な納税者が報われる世界が存在するというのだろうか?

タックスヘイブンの有る無しにかかわらず、世の中は不公平であり、世界の仕組みを根本的に変えでしない限り、その不公平は解消されない。

タックスヘイブンの正義は、何の経済的資源も持たない小国が、税金を取らないことで自国が生き延びることにある。

そのシステム自体を悪だと言うのであれば、それは政治的にも経済的にも弱者であるタックスヘイブンの正義には反する事になる。

そもそも徴税とはなんの為にあるものかを考える必要があるだろう。

税とは、為政者が国の予算を国民から税として徴収し、それによって、社会保障や安全保障を提供し、最低限の文化的生活を送れるようにインフラなどを整備するものだが、日本を含む多くの先進国においては、「保険料を支払っても保障を得られる保証のない生命保険の保険料」のようなものでもある。

そんな生命保険なら、買わなければ良いだけの話しだが、税金は国民が支払う義務を負っているので、課税市民である限り強制的に支払わされる。

そして、徴税する側と徴税される側があり、一般市民は徴税される側である。

このパナマ文書を巡る一連の議論からは、「徴税の公正さ」が世界の正義であるかのような印象を受けるが、あくまで徴税する側の正義しかなく、「一方的に徴税される弱者が生き残るための正義」というもののかけらも感じられない。

もともと不平等な金融社会において、唯一平等な機会を与えうる必要悪として存在しているタックスヘイブンを、徴税側である為政者の一方的な正義に基づいて世論誘導し、排除しようとする動きそのものが危険なものだと感じるべきだろう。