5月から電気代が10%(関西電力で平均9.75%)ほど値上がりした。
2年前の東日本大震災以降、脱原発の流れが強まり、火力発電の比率が高まっている。
しかもこの円安による輸入燃料費の高騰・・・。
ご存知のように火力発電は、石油、石炭、天然ガスなど輸入燃料を燃やして発電している。
震災前には、原子力比率が30%ほどあったのが、今は90%近くが火力に依存している。
このまま、完全に脱原発を受け入れていくという事は、火力依存を受け入れるという事だ。
火力依存を受け入れるという事は、電気代の値上がりを受け入れるという事になる。
今回の値上げのベースとなっている発電燃料費は、おそらくUS1ドル=80円くらいで計算されていると思われるが、今は既にUS1ドル=100円近いし、もしこれが120円になったら、あと40%くらい値上げになるのだろうか?
ここでは、原発の是非を議論するつもりはないが、それ以前に電気というものについてもう一度深く考えてみる必要があるような気がしている。
電気の役割を全て、ガスなどそれ以外のエネルギーで代替することは不可能だ。
人間が生活していくうえで、何をするにも電気は必要だ。
まるで、人間にとって血液が必要なように、世界は電気が回っていないと機能しない。
環境ということを考えると、脱電気ということも考えなければいけないのだろうが、残念ながら人類が電気から離れることができるようには思えない。
昨今の円安は、冷静に考えると、この電気を生み出すための90%を担っている輸入燃料のコストを確実に円安分だけ増加させるわけだから、電力料金は当然値上がりし、電気によって生み出されている商品もサービスも全てがそのコスト増を被るわけだ。
メーカーにとってみれば10%の電気料金値上げだけでも、そのコスト増を全て余剰利益で吸収することはできないだろう。
それが20%、30%と負担が多くなってきたときに、実際に消費者が被るインフレ率はどのくらいになるのだろうか?
どうも2%という政府のインフレターゲットとの大きな乖離が感じられる。
2%程度のインフレターゲットというのは、国民が単に受け入れやすい数字を挙げただけなのではないか?とすら思える。
[脱原発=火力発電依存]+円安による燃料費のコスト増=電気料金の値上げ⇒商品・サービス価格の値上げ⇒インフレ という図式の中だけで考えても、物価は2%などという心地よい数字を遥かに超えて上昇するのではないか?
さらに、来年には消費税の増税が控えているので、それだけでも消費者の立場からすれば増税分の3%は確実に負担が増す。
増税前には、選択の余地がない売り手市場が形成されるのが常なので、このエネルギーコストの増加も踏まえて、モノの値段が必要以上に上昇する恐れがある。
要は、高くても売れるというバブル状況が発生しかねない。
一方、人間のコストについては、人間は電気で動いていないので、人件費は抑えることが可能だ。
企業は、電気料金の値上げは受け入れざるを得ないが、人件費の値上げは受け入れなくてもよい。
人件費(給与)のアップがインフレ(バブル)と連動して起こるためには、企業がよりこのバブルチャンスに便乗してぼったくりを行い、その消費者からぼったくった利益を社員に配分するしかない。
これもバブル的な現象を加速させることになるだろう。
本日4年1ヶ月ぶりに為替がUS1ドル=100円の壁を突破した。
東証はこれを受けて一時400円高になったが、これを喜ぶ気にはとてもなれない。
電気料金の値上げの方が心配だ。