投資助言業の本質について | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

金融庁管轄の「投資助言代理業」を営む会社の活動限界というものについて最近思いをはせている。


「投資助言業」とは、もともと「投資顧問業」と呼ばれていたもので、2007年9月から施行された金融商品取引法のもとで、投資に関する助言を業として行う会社に対して登録が義務付けられたものです。


財務局のHPに記載された文言によれば、以下の様な活動が規定されています。


「投資助言業は、顧客に対して投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等又は金融商品の価値等(デリバティブ取引を含む)の分析に基づく投資判断に関し、助言を行うものであり、代理業は投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介を行うものですから、法律等を遵守し、投資者の保護を図ることが必要です。」


投資助言代理の登録をして営業をしている会社は沢山ありますが、金融庁の定める指針と規制に従って商売が成り立っているのかどうか?ということについては大いに疑問があります。


投資助言とは簡単に言えば「投資に関するアドバイス」であり、どのようなものに投資すれば良いのかに関するコンサルで、クライアントはそれに対し、投資助言契約に基づいてフィーを支払うというものです。


上記の財務局指針にある「投資の一任契約締結の代理又は媒介」という部分については、ポートフォリオサービスのような一任管理サービスは代理又は媒介できても直接は提供できないという風に解釈できます。


一任ではなく、最終的にクライアントが自分で判断するという前提で、どのようなファンドを選択すればよいのか?どのタイミングでどのようにスイッチングすればよいのかなどは相談できます。


現実的には、「どのような投資商品を買ったら良いか?」という相談にお金を払う人たちが世の中にどれくらいいるのでしょうか?


おそらく、そのような奇特な人は殆どいないでしょう。


故に、この純粋な「投資助言業」というビジネスモデルは現在のところ儲かるビジネスとは考えがたい訳です。


一方、投資商品という無形の商品は、販売に際してコミッションという手数料を販売者が手にするという風習があります。


たいていは、如何なる投資商品であれ、そのような販売手数料が存在すると考えてください。


投資アドバイザーが、クライアントにとってどの投資商品がいちばん良いかという中立的なアドバイスを提供するときに、この販売手数料をその人や会社が貰っていないのであれば、その中立性や、アドバイスにフィーが発生することもわからなくはありませんが、そんな世の中ではありません。


AというファンドとBという同じようなファンドがあり、Aファンドには販売手数料が発生し、Bファンドには販売手数料が発生しないとすれば、だれもBファンドなど勧めたりはしません。


もし、全く販売手数料の発生しない世界で中立的なアドバイスを提供するアドバイザーが居るのであれば、その人にはアドバイスフィーを払って相談する価値があるかもしれません。


日本人の皆さんは、そういった販売手数料をもらって特定の商品を勧めるアドバイザーに無料でアドバイスを受けることに慣れていますので、アドバイスにフィーを払うという観念が欠落しています。


結果として、販売手数料を一切もらわずに、有料で中立的な助言を提供することを求められる「投資助言業」は成り立ちにくくなっています。


そのような環境下で「投資助言業」を運営し、ビジネスとしてやっていこうとするならば、助言の範囲を逸脱した販売を行うか、インチキファンドの募集行為を行うくらいしか生き残る道がありません。


実際にそのようなケースは後を絶たず、金融庁は自ら定めた業法上の資格要件を満たした業者の取り締まりや管理をどんどん厳しくせざるを得なくなっているようです。


そして、そういったガイドラインが厳しくなればなるほど、さらにそのガイドラインを守ってビジネスを成り立たせることは困難になり、さらにアウトローなビジネスに手を染めざるを得なくなります。


投資というものは、時に命に係わるような案件であることもあります。


投資の話をするのに、免許を持ったアドバイザーもモグリのアドバイザーもその結果を保証することはできません。


投資のアドバイスと占いは、そういった意味ではさほど差のないものかもしれません。


占いというよりは学問に近い体系を持った気学や風水といったものも、やはり結果を保証できない点に於いては同じです。


しかし、ひとの人生を占う占いは資格が要らず、投資助言は資格(登録)が必要なのです。


お上の考えることは、取りあえず問題の起こりそうなものは、現実的な問題はさておき、管理下に置きたいという方向性なのでしょう。


占いによって、死んでしまうような人がいっぱい出てくれば占いも認可制になるかもしれません。


投資助言業という登録制のビジネスは、お金や投資といった危険物に関わる業者を、管轄下に置くための体裁に過ぎず、そのガイドラインは業務を阻害こそすれ推進する方向ではないのです。


それはそれで仕方ないとあきらめるしかありません。


今後は、ADR法対策で仲裁機関としてお金を払う先となっている投資顧問業協会などではなく、新しく民間で投資助言業協会を設立して、現実的な投資アドバイザー資格検定を行うなどして、業界のレベルアップを図らなくてはならないでしょう。


そのことを国に頼っていてはいけないということです。


資格を持った医師や認可された病院が国のガイドラインに従って治療した結果殺されるのと、無資格だが腕のある医師に救われるのと、選択肢があればどちらを選ぶか?と言われれば、間違いなく死ぬよりは無資格の医師を選ぶでしょう。


しかし、認可や資格というものを持っているものと、持っていないものを比較するときに、大半の人は持っているものに信頼性を置くものです。


そして、投資の世界は日本では医療の現場と比較すれば遥かに温い世界ですし、ひとの生き死ににまで影響することは少ないでしょうから、取りあえず管轄だけすればいいだろうという程度の政府の中途半端な関与が、より状況を判り難くしてしまうのです。


いずれにせよ、現状の投資助言代理は、500万円の預託金を支払って、業として投資助言のビジネスを行う許可を得、がんじがらめにされて儲からないビジネスを展開しなければならない泥沼の世界です。


それを真面目にそして金融庁の定めるガイドラインに忠実に沿ってやろうとするほどに、より儲からないビジネスです。


究極的には、投資助言の会社をビジネスとして成功させるためには、「投資になるべく関わらない」ビジネスを展開するしかないということになりそうです。