オフショア年金プランのプロバイダーでマン島のHansard(ハンサード)という会社が提供するAspire(アスパイア)という積立商品(Savings Plan)があります。
数あるオフショア積み立て商品の選択肢の中から、特にこの商品を勧めている人や会社が多いのか、このブログに対する問い合わせも最近多くなってきています。
結論から言いますと、私ならこの商品は買いませんし、他人にも勧めません。
現在日本国内から、日本の住所証明で契約できるオフショアの積み立て商品は、以下の4つです。
☆ハンサード アスパイア (マン島)
☆ロイヤルロンドン360°クゥアンタム (マン島)
☆インベスターズトラスト エボリューション (ケイマン島)
☆コーンヒル ライフスタイル アカウント (ルクセンブルグ)
昨年フレンズプロビデントが日本人市場から撤退するまでは、日本人市場における全オフショア積み立て市場の80%以上がフレンズプロビデントによって占有されていたと考えられますが、残念ながら、フレンズプロビデント撤退後半年が過ぎ、上記すべての選択肢と香港現地で購入可能な香港籍のアジアス(ageas)、スタンダードライフ(Standardl Life)そしてサンライフ(Sunlife)を合計してもその市場規模を埋めるに至ってないような気がしています。
色々な人がさまざまな立場からそれぞれの商品を勧めるので、どれが本当に良い商品なのかを素人が判断することは難しいと思います。
その中で、特にハンサードのアスパイアに関しては、手数料やその他の観点からあまりお勧めしない旨を述べてきましたが、はっきりとした見解を述べておこうと思います。
あくまで、個人の意見ですから、既に買ってしまった方は頑張って続けて欲しいと思いますし、営業トークに弱い方はそれでもハンサードを買いたいと思われるかもしれませんが、それを否定するつもりは全くありません。
ただ、冷静に考えれば誰でもわかることなので、私自身の経験から判断基準を話しておきたいと思います。
まず、ハンサードのアスパイアの手数料は決して他社の商品と比較して安いということはありませんが、手数料やボーナス体系のメリットを営業的に前面に押し出す商品は、それを売り込みの文句として使う人間が信用できないのと、その商品や提供する会社にそれを超える魅力が備わっていないと考えられます。
実際に手数料が安いという点においては、サンライフとインベスターズトラストの提供する商品が圧倒的に安い体系を持っています。
それでも、その商品がいちばんであるということにはなりません。
しかも、ハンサード社は昨年手数料体系を改善した新商品を上市しているのも関わらず、それを日本居住者には販売しないという理不尽な方針である点も気になります。
ハンサード社の正規代理店と名乗る会社が、日本中のFPや投資助言代理の会社に無差別に営業メールを送っているという乱雑で業法を無視したやり方も問題です。
プロバイダー自体がその様な乱雑な方針を持っている、もしくは管理できない体制であるという部分は致命的です。
残念ながら、業界的な見方をすれば、ハンサード社のマーケティングは完全に失敗しています。
ハンサードのは唯一、かつてはフレンズプロビデントも日本居住者向けに提供していたCR(キャピタル・レデンプション)という保険の付いていないバージョンを持っていますが、それは良いとして、それ以外の会社が提供しているWL(ホールライフ)が保険業法違反であるという論旨を仲介者がネット上で展開するのもどうかと思います。
問題はそこではなく、日本国内で未登録の金融商品を広告、勧誘、販売、仲介することはいずれにしてもできないというところにあり、明らかに理論のすり替えです。
投資助言代理の会社なら合法的に紹介できるというのもウソです。
証券会社や銀行であってもハンサードのアスパイアは販売できません。
上記のように多くの選択肢のある中で、ハンサードのアスパイアを選択する理由は全く見当たりません。
どんないい話や勉強になる話を聞かされても、その人や会社からハンサードの名前がお勧めで出てきたならサヨナラです。
※以前に述べたアスパイアの手数料の構造に関しては以下をご参照ください。
1)スイッチング毎に掛かる手数料が存在する
年1回のスイッチングは無料とのこと。
それ以上のスイッチングには手数料がかかる。
1スイッチング取引に際し、片道47ポンド。往復で47ポンドx2=94ポンド(約12,400円)。
5個のファンドを8個にスイッチングする場合 94ポンドx8個=752ポンド(99,264円)となる。
さすがにスイッチングに関しては、BID/OFFERのスプレッドが無いにせよこれは最悪です。
もしこれが本当だとすれば、
通常5つくらいのファンドを保有しつつ年に数回のスイッチングを行うのが一般的なスイッチング頻度ですが、3回だとしても12,400円 x 5 x 3 = 186,000円 が年間かかることになります。
25年間であれば、4,650,000円かかります。
これは積み立ての金額に関わらず発生します。
しかも、ハンサードはファンドの保有数は初回20ファンドまでで、そのあとは制限がありませんので、20でも30でも保有できますが、下手にそんなことをすればどうなるかはお分かり頂けるでしょう。
初期ユニット期間中にスイッチング手数料が発生した場合にはいったいどこから手数料が引かれるのか?という疑問も発生します。
ちなみに、将来購入していくファンドの種類を変更するリダイレクション(redirection)には手数料はかかりません。
2)約7.5%のBID/OFFERスプレッドが存在する
おそらくVALUATION REPORT(評価レポート)上の評価額はBIDプライスでのみ表示されるのでしょうが、BID/OFFERが7.5%あるということは、毎月買い付けるファンドの値段がOFFERプライス(7.5%高い)ということになります。
逆に言えば、約7.5%高い値段で購入したファンドの評価レポート上の価値は7.5%安いBIDプライスで表示されているだろうということですから、実際にこの商品を買っている人ですら、認識していない可能性が高いでしょう。
仮にBIDプライスが100円のファンドがあったとすれば、それを107.5円で買い付けて、100円で表示する訳です。
フレンズプロビデントなど他社が提供する同様の商品では、スイッチング時は当然のことながら、ファンドの買い付けに関してBID/OFFERのスプレッドは無いのが一般的です。
3)初期ユニットにかかる手数料が少し高い 8%(7%+1%)
プロバイダー(ハンサード)が契約期間中徴収するメインの手数料です。
初期ユニット(15~24ヵ月の購入ユニット)、いわゆる手数料の人質部分ですが、この時価総額に対してかかる初期ユニット手数料はフレンズプロビデントの6%に対して7%ということでしょう。
これが、初期ユニット期間(15~24ヵ月)の間しか発生しないという誤解がありますが、その理解は間違っています。
概ね、ハンサードの手数料が安いという論点の中心はこの誤解に基づいているような気がします。
初期ユニット部分に対して8%、その後の積み立てユニット(アキュムレーションユニット)に対して1%ということですのでお間違えの無いように。
フレンズプロビデントの場合は1.2%のファンド管理手数料を含めれば7.2%(6%+1.2%)ということになりますが、1.2%はミラーファンドの価格に反映されているので見えません。
この部分での手数料比較は、
フレンズ VS ハンサード = 7.2% & 1.2% VS 8% & 1% ということになります。
フレンズの方が、イニシャルユニットにかかる手数料は安い(6% VS 7%)が、ハンサードの方がファンド管理手数料(1.2% VS 1%)が安いという状況です。
4)早期解約手数料が無い?
通常、イニシャルユニット18~24ヵ月の積み立てで購入されたファンドユニットの塊(手数料の人質)を満期までに解約するときにその部分から残存年数に対してペナルティーとして差し引かれるものが、この早期解約手数料ですが、ハンサードのアスパイアの場合、イニシャルユニットとボーナスユニットは、「満期まで金銭的価値をもたない」とされています。
つまり、25年契約をして10年目に解約をしようとも、24年目に解約をしようとしてもペナルティーはイニシャルユニット+ボーナスユニットの100%ということになります。
これは極めて厳しいペナルティーです。
早期解約手数料が無いのではなく、イニシャルユニットの時価総額に対して100%ということです。
ハンサードはボーナスが大きいという話も聞きますが、ボーナスユニットも満期までは「金銭的価値が無い」ということを考えるとあまり意味がありません。
しかも、3)の初期ユニット手数料8%が初期ユニットとボーナスユニットの合計バリューに対して契約満期までかかることも忘れてはなりません。
5)クレジットカード手数料が高い
米ドル2.01%、円2.11%、英ポンド1.45%
英文の資料にはこのクレジットカードによる手数料が記載されていません。
上記の数字は、日本語の資料によるものです。
フレンズプロビデントの1%と比べて倍です。しかしこれは実金額でみれば大したことない。
ロイヤルロンドン360の場合は、現在キャンペーン中でカード支払い手数料は無料となっています。
はっきりとパンフレットに明記されていないが故、このカード手数料については代理店と要確認です。
以上のように、ハンサード(Hansard)社の提供する、積み立て型年金プラン「アスパイア(Aspire)」を選択しようとしている人は、このトラップだらけの手数料構造をよく理解する必要があります。