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オフショア年金プランのプロバイダーでマン島のHansard(ハンサード)という会社が提供するAspire(アスパイア)という商品があります。
このAspire(アスパイア)には積み立て(Savings Plan=Regular Contribution)と一括(Lump Sum=Single Contribution)がありますが、ここではまず積み立ての商品に絞って話をしたいと思います。
同じマン島籍のフレンズプロビデント(Friends Provident)、ロイヤルロンドン360(Royal London360)、香港籍のスタンダードライフ(Standard Life)、アジアス/エイジアス(ageas)などが提供している商品とほぼ同型の積み立て型年金プランですが、はたしてハンサード「アスパイア」の手数料はそれ以外の商品と比べて安いのでしょうか?
ハンサードインターナショナルから直接取り寄せた英文の資料をもとに検証してみました。
日本語の資料は手元にあったのですが、翻訳が信用できなかったので、英文のオリジナルを取り寄せる必要がありました。
誰かが直訳をしたであろう日本語の資料はほぼ理解不能でしたが、英文で読んでも分かりにくい内容でした。
原文からして分かりにくく不明瞭な表現であったということでしょう。
結論としては、ハンサードの手数料はフレンズプロビデントやスタンダードライフ、アジアス(エイジアス)やロイヤルロンドンなど他社の商品と比較すると高いということが判明しました。
以下の項目が、特に致命的と思われる部分です。
1)スイッチング毎に掛かる手数料
1スイッチング取引に際し、片道47ポンド。往復で47ポンドx2=94ポンド(約11,600円)。
5個のファンドを8個にスイッチングする場合 94ポンドx8個=752ポンド(約92,800円)となる?
スイッチングに関してはBID/OFFERのスプレッドが無いにせよこれは最悪です。
もしこれが本当だとすれば、
通常5つくらいのファンドを保有しつつ年に数回のスイッチングを行うのが一般的なスイッチング頻度ですが、3回だとしても11,600円 x 5 x 3 = 174,000円 が年間かかることになります。
25年間であれば、4,350,000円かかります。
これは積み立ての金額に関わらず発生します。
しかも、ハンサードはファンドの保有数は初回20ファンドまでで、そのあとは制限がありませんので、20でも30でも保有できますが、下手にそんなことをすればどうなるかはお分かり頂けるでしょう。
ちなみに、将来購入していくファンドの種類を変更するリダイレクション(redirection)には手数料はかかりません。
2)約7.5%のBID/OFFERスプレッドが存在する
おそらくVALUATION REPORT(評価レポート)上の評価額はBIDプライスでのみ表示されるのでしょうが、BID/OFFERが7.5%あるということは、毎月買い付けるファンドの値段がOFFERプライス(7.5%高い)ということになります。
逆に言えば、約7.5%高い値段で購入したファンドの評価レポート上の価値は7.5%安いBIDプライスで表示されているだろうということですから、実際にこの商品を買っている人ですら、認識していない可能性が高いでしょう。
仮にBIDプライスが100円のファンドがあったとすれば、それを107.5円で買い付けて、100円で表示する訳です。
フレンズプロビデントなど他社が提供する同様の商品では、スイッチング時は当然のことながら、ファンドの買い付けに関してBID/OFFERのスプレッドは無いのが一般的です。
3)初期ユニット手数料8%(7%+1%)
プロバイダー(ハンサード)が契約期間中徴収するメインの手数料です。
初期ユニット(15~24ヵ月の購入ユニット)、いわゆる手数料の人質部分ですが、この時価総額に対してかかる初期ユニット手数料はフレンズプロビデントの6%に対して7%ということでしょう。
これが、初期ユニット期間(15~24ヵ月)の間しか発生しないという誤解がありますが、その理解は間違っています。
概ね、ハンサードの手数料が他社よりも安いという意見の論点はこの誤解に基づいているような気がします。
初期ユニット部分に対して8%、その後の積み立てユニット(アキュムレーションユニット)に対して1%ということですのでお間違えの無いように。
フレンズプロビデントの場合は1.2%のファンド管理手数料を含めれば7.2%(6%+1.2%)ということになりますが、1.2%はミラーファンドの価格に反映されているので見えません。
この部分での手数料比較は、
フレンズ VS ハンサード = 7.2% & 1.2% VS 8% & 1% ということになります。
フレンズの方が、イニシャルユニットにかかる手数料は安い(6% VS 7%)が、ハンサードの方がファンド管理手数料(1.2% VS 1%)が安いという状況です。
4)早期解約手数料
通常、イニシャルユニット18~24ヵ月の積み立てで購入されたファンドユニットの塊(手数料の人質)を満期までに解約するときにその部分から残存年数に対してペナルティーとして差し引かれるものが、この早期解約手数料ですが、ハンサードのアスパイアの場合、イニシャルユニットとボーナスユニットは、「満期まで金銭的価値をもたない」とされています。
つまり、25年契約をして10年目に解約をしようとも、24年目に解約をしようとしてもペナルティーはイニシャルユニット+ボーナスユニットの100%ということになります。
これは極めて厳しいペナルティーです。
ハンサードはボーナスが大きいという話も聞きますが、ボーナスユニットも満期までは「金銭的価値が無い」ということを考えるとあまり意味がありません。
しかも、3)の初期ユニット手数料8%が初期ユニットとボーナスユニットの合計バリューに対して契約満期までかかることも忘れてはなりません。
5)クレジットカード手数料
米ドル2.01%、円2.11%、英ポンド1.45%
英文の資料にはこのクレジットカードによる手数料が記載されていません。
上記の数字は、日本語の資料によるものです。
フレンズプロビデントの1%と比べて倍です。
ロイヤルロンドン360の場合など、現在はキャンペーン中でカード支払い手数料は無料となっています。
はっきりとパンフレットに明記されていないが故、このカード手数料については代理店と要確認です。
あと、これも謎ですが、クレジットカードによる支払いに関してカード手数料に「消費税の5%」が加算されれて引かれるという日本語の資料表記を発見しました。
たぶん円決済の場合だけであるとは思いますが、たとえば月5万円の積み立ての場合、カード支払手数料は、5万円+2%=1000円ですがこの1000円に5%=50円の手数料が乗って1050円になるということです。
おそらく2.11%という上記の表記はこの消費税を含めたものなのでしょう。
このハンサード「アスパイア」は日本円での積み立てが可能であり、ハンサード社は日本国内の銀行間でのBSO(銀行自動引き落とし)設定を可能にしているため、多くの契約者は日本の銀行から手数料の比較的安い「定額自動送金サービス」を利用しているようです。
果たして、このやり方が本当の海外投資と言えるのか?というところも疑問です。
殆どのファンド価格はUSD/EUR/BPで設定されていますので、積み立て通貨と評価通貨はUSDを選択するのがこのような商品ではベストであると思います。
もちろん、将来急激な円安になってしまったらどうするのか?という問題はありますが、そのような状況で円建て積み立てをやっていたら将来えらいことになってしまいます。
以上のように、ハンサード(Hansard)社の提供する、積み立て型年金プラン「アスパイア(Aspire)」を選択しようとしている人は、このトラップだらけの手数料構造をよく理解する必要があります。
どうぞお気を付け下さい。
残念ながら、この商品をネット上で紹介している人たちの多くは、英語をちゃんと理解していないのか?わかっていながら敢えて正しい情報を伝えていないのか?のどちらかとしか思えません。