キャセイの機上でなつかしい「ZARD」の15周年記念アルバムを聴いて、まだバブルの余韻が続く20年くらい前の自分を思い出していました。
ユニットなのかソロなのかもわからない謎のミュージシャン「ZARD」は90年代の初頭に一世を風靡しました。
ストーカー的ともいえる未練たらたらのウェットなラブソングをアップテンポのストリングスにのせて甘ったるい歌声で同じサビの部分を延々と繰り返すZARDの世界は、ZARDでしか成り立ちえなかった、おそらく今後二度と同じコンセプトが成立しないであろう奇跡的な楽曲と言ってもいいでしょう。
テレビにも出ず、ライブもやらない、元レースクイーンという噂の坂井泉水という謎めいたボーカルのキャラクター性とやたら耳につくあの甘ったるい歌声。
結構女々しい感じのウェットな歌詞とどの曲を聴いても同じにすら聞こえるアップテンポのあのリズム。
あの時代だから受けいれられたといえる完全なミスマッチ・コンセプトでした。
ある意味、今初めて聞くひとにとっては違和感を感じ、すこし気持ち悪く感じるに違いありません。
それでも90年代前半、GはZARDにハマっていてカーステレオではZARDの曲をよく聞いていました。
その時に一緒だった最初の結婚相手はこのZARDの曲が大嫌いで、ドイツから車でスイス一周のバケーション旅行に出かけた時にずっとBMW525のカーステレオでZARDをかけていてキレれられたのを覚えています。
女性からは、元レースクイーンというのがまず気に入らないのと、男に媚びるような歌い方が癇に障るようでした・・・思わぬところに地雷はあるものです。
周知のように、2007年にボーカルの坂井泉水さんは短い人生の幕を閉じましたが、彼女が1991年にデビューしてから亡くなるまでの16年間は、まさに日本経済の失われた20年のコア部分です。
その間に、経済的には得るものが無かった我々ですが、ZARDの歌にあるような恋愛というものを純粋に楽しめる最後の時代だったのかもしれません。
彼女自身も、一瞬にしてスターダムを登り詰め、そして消えて行ってしまいました。
ZARDはこと坂井泉水は、もうこの世に居ませんが、90年代にZARDの曲と共に過ごした人たちにとって、彼女の歌はしつこいサビの部分の記憶と共にみんなの思い出としてずっと生き続けることでしょう。