エッセイ183「故郷はどこ?」 | あなたのココロ、治します。

エッセイ183「故郷はどこ?」


 出身は? と聞かれると少し困ってしまう。産まれたのは北海道の名寄市立病院だが、それは出産に当たって母が実家に帰ったからであり、当時家族は千葉県稲毛市に住んでいた。そこには僕は三歳までしかいなくて、それからは東京の新宿に移り住み、僕が高校卒業と同時に僕は中野の下宿へ、家族は現在住んでいる千葉県白井市に引っ越した。

 だから出生は名寄になり、出身は新宿であるといったらいいのだろうか。稲毛のことはほとんど覚えていない。団地の五階に住んでいたという。兄は稲毛の保育園に通ったらしいので多少記憶があるらしい。大きくなってからその団地に行ってみたことがあるが、よく遊んだらしい小さな砂場をかろうじて覚えているような気がするだけである。新宿に移ってからの記憶は割とある。

 稲毛に住んでいたときの面白いエピソードがある。僕は全く記憶がなく、母からあとで聞いたものだ。僕が一歳か二歳の頃、母が朝ランニングにいくときのことだ。兄と父はそれぞれ会社と保育園に行っていて僕と母親の二人だけだった。母は家の鍵を持たずにランニングに出かけようとした。僕もそれを追ってドアの部分をがちゃがちゃといじった。そうすると内側から鍵がかかってしまった。母はちょっと出かけるつもりでいたので鍵を持っていなかった。

 母は口頭で鍵の開け方をドア越しに一生懸命説明したが、僕はまるでそれを理解できなかったらしい。母ははしご車を呼んだ。はしご車でベランダから中に入り、事なきを得たという。僕はこの話題をいたく気に入っている。

 稲毛でもう一つエピソードがある。走り回り事件である。家族で公園に遊びに行ったそうだ。そこには陸上競技用のトラックがあった。なぜだかわからないが僕は走ることが好きだったようで、親にもうやめなさいといわれるまで延々と走り続けたという。中学生になって新宿区の陸上競技大会でろくに練習もせずに四位入賞できたのもこの天性の「走る」才能のおかげだったかもしれない。