エッセイ158「セラピスト右京」
右京っていうのはうちで飼っている柴犬のこと。我が家では初めての本格的ペット。小さいころから亀や文鳥なんかは飼ったことがあったけど、なにせ公務員住宅育ちだから犬猫なんて飼ったことがなかった。今は一戸建てに住んでいるけど、もし父が生きていたら飼うことにはならなかったと思う。家族の意見をすぐ否定、叱咤する人だったから。
「そんな金どこにあるんだ!」って感じで。でも父が死んで二年後、以前から僕が猫か犬が欲しいといっていたのだけど、それを機会に母がやっぱり不憫に思ったんだと思う。きっとアニマルセラピーにもなるだろうってことで犬を飼おうってことになった。
僕の第一希望は猫だったんだけど、母が触れないくらいの猫嫌いだったので犬になった。はじめはそこら辺に貼ってある「子犬差し上げます」みたいなビラを見て雑種をもらおうって感じだったのだけど、知り合いに相談に行って考えが変わった。
以前、今の家を貸していた人で、柴犬専門のブリーダーをやっている人。曰く、どんな犬でも小さいときはかわいいけれど、雑種は大きくなったらどんな風貌になったり、どんな病気を持っていたりするか分からないから、絶対ちゃんとした犬を飼った方がいいって。
十数年も付き合っていくわけだし、病気になりやすい犬だったら大変だって。それもそうだなあって僕も母も思って、その人に手配してもらうことにした。それが七月のことで実際に子犬がきたのは十一月。
それまでは楽しみで楽しみで、自分で材木を切ったりくぎを打ったり、防腐剤を塗ったりして犬舎を作った。ホームセンターなんかで買っても大してしないのだけど
「おまえのために一生懸命作ったんだよ」なんて気持ちが動物の第六感で分かってくれるような気がして。真夏で汗をかきながら麦わら帽子と軍手をつけて実質一週間くらいかかったかな。はじめは防腐剤の臭いが強くて、鼻がいい犬には嫌われるんじゃないかと思って心配していた。
あとは資料集め。犬のことをほとんど知らなかったから、図書館で沢山の本をコピーしたり、役に立ちそうな本は買ったり。飼い方ビデオを見て、内容をまとめてワープロで打ち出したり。分からないことを箇条書きにしてブリーダーの所に聞きにいったりした。
そして十一月に子犬がきた。木の箱に二匹入っていて、どっちか選んでいいよってことだった。一匹は人慣れしている感じの普通の顔。もう一匹は箱から出るのも嫌がっていた、気の弱そうだけど目が大きくてかわいい顔。僕は元気なやつの方がいいと思ったのだけど、母とブリーダーは顔のかわいい方がいいんじゃないかということで、そっちをもらうことにした。
気が弱いのは人間が手間をかけてかわいがってやればなおるということだったが、今の彼を見るとこの時の選択は正しかったのかどうか。
子犬がきてから名前が決まるまで三日くらいかかった。家族三人で候補をいくつか出し合ってしゃぶしゃぶやで夕飯を食べながら決めた。兄は横文字の名前ばかりで、母はゴンとかマルとか無意味な名前。僕は右京・左京・虎之介を挙げた。
元気な犬になって欲しいと望むなら好きなF一ドライバーからあやかり、賢い犬になって欲しいならば小説家の小松左京さんや、京都の左京区からあやかろうというもの。どれも日本犬にふさわしいかっこいい名前だと自負していた。
結局、兄が「右京っていいねえ」といったことで右京に決まった。
三年後の今、片山右京さんのようにアグレッシブに育ったかといえば、神経質で興奮しやすく、臆病でかなりおバカな犬になった。
なにせこちら側も飼い方に慣れていなかったので不手際があったのかもしれないし、彼の元来の性格とおミソだったのかもしれない。しかし彼がおバカなおかげで毎日家族みんなで笑わせてもらっている。素晴らしいセラピストである。
「そんな金どこにあるんだ!」って感じで。でも父が死んで二年後、以前から僕が猫か犬が欲しいといっていたのだけど、それを機会に母がやっぱり不憫に思ったんだと思う。きっとアニマルセラピーにもなるだろうってことで犬を飼おうってことになった。
僕の第一希望は猫だったんだけど、母が触れないくらいの猫嫌いだったので犬になった。はじめはそこら辺に貼ってある「子犬差し上げます」みたいなビラを見て雑種をもらおうって感じだったのだけど、知り合いに相談に行って考えが変わった。
以前、今の家を貸していた人で、柴犬専門のブリーダーをやっている人。曰く、どんな犬でも小さいときはかわいいけれど、雑種は大きくなったらどんな風貌になったり、どんな病気を持っていたりするか分からないから、絶対ちゃんとした犬を飼った方がいいって。
十数年も付き合っていくわけだし、病気になりやすい犬だったら大変だって。それもそうだなあって僕も母も思って、その人に手配してもらうことにした。それが七月のことで実際に子犬がきたのは十一月。
それまでは楽しみで楽しみで、自分で材木を切ったりくぎを打ったり、防腐剤を塗ったりして犬舎を作った。ホームセンターなんかで買っても大してしないのだけど
「おまえのために一生懸命作ったんだよ」なんて気持ちが動物の第六感で分かってくれるような気がして。真夏で汗をかきながら麦わら帽子と軍手をつけて実質一週間くらいかかったかな。はじめは防腐剤の臭いが強くて、鼻がいい犬には嫌われるんじゃないかと思って心配していた。
あとは資料集め。犬のことをほとんど知らなかったから、図書館で沢山の本をコピーしたり、役に立ちそうな本は買ったり。飼い方ビデオを見て、内容をまとめてワープロで打ち出したり。分からないことを箇条書きにしてブリーダーの所に聞きにいったりした。
そして十一月に子犬がきた。木の箱に二匹入っていて、どっちか選んでいいよってことだった。一匹は人慣れしている感じの普通の顔。もう一匹は箱から出るのも嫌がっていた、気の弱そうだけど目が大きくてかわいい顔。僕は元気なやつの方がいいと思ったのだけど、母とブリーダーは顔のかわいい方がいいんじゃないかということで、そっちをもらうことにした。
気が弱いのは人間が手間をかけてかわいがってやればなおるということだったが、今の彼を見るとこの時の選択は正しかったのかどうか。
子犬がきてから名前が決まるまで三日くらいかかった。家族三人で候補をいくつか出し合ってしゃぶしゃぶやで夕飯を食べながら決めた。兄は横文字の名前ばかりで、母はゴンとかマルとか無意味な名前。僕は右京・左京・虎之介を挙げた。
元気な犬になって欲しいと望むなら好きなF一ドライバーからあやかり、賢い犬になって欲しいならば小説家の小松左京さんや、京都の左京区からあやかろうというもの。どれも日本犬にふさわしいかっこいい名前だと自負していた。
結局、兄が「右京っていいねえ」といったことで右京に決まった。
三年後の今、片山右京さんのようにアグレッシブに育ったかといえば、神経質で興奮しやすく、臆病でかなりおバカな犬になった。
なにせこちら側も飼い方に慣れていなかったので不手際があったのかもしれないし、彼の元来の性格とおミソだったのかもしれない。しかし彼がおバカなおかげで毎日家族みんなで笑わせてもらっている。素晴らしいセラピストである。