エッセイ30「友人」
僕には友人らしき人はほとんどいません。そもそも友人ってなんなのですか? どこからが友人でどこからは違うのかわかりません。うちの父親も友人がいない人間でした。つきあいで飲んで帰ってくることはまずなく、毎日定時に帰ってきた。日曜もまず家にいた。ゴルフに行ったこともなく、友人から電話がかかってきたこともない。家では妻と子どもをいつも罵倒していた。孤独な悲しい人間だった。
小学校の頃、「友達と遊びに行く」といったら「友達、友達ってなんだ!」と怒鳴られたことがあった。あんまり友達と親しくしてはいけないのだということを学んだ。父に「絶対サラ金なんかに手を出すな」と教えられたことがあったが(中学生くらいのときに!)、「友人は一生の財産だ。大切にしろ」と教えられたことは一度もなかった。貧乏な家に育った人だったから生きることに必死でお金が大切だったことはわかりますけど。
僕に友人らしき人がいない理由がもうひとつ。小中学校の頃は気づいたら友人に囲まれていた。人を引きつける面白さなり、かわいさなりがあったのだろう。だから友達を作る努力をしたことがなかった。高校では自分と同じような出来の悪い連中がいつの間にか集まっていた。友人を作らなくては、と初めて思ったのが大学だった。留年と休学をしていてもうあとがなかった。二つのサークルと体育会に入った。同級生は僕より三歳年下だし、何となくよそよそしいものになってしまった。会社の同期は友人なのかライバルなのかわからない。こうして今まで生きてきて僕に電話をくれる人はいない。僕からかけて会いたいという人もいない(対人恐怖で緊張するからっていうこともある)。毎年来る年賀状は五~一○枚くらい。
生まれ変わるなら? 社交的な人がいいに決まってる。そういえば六年も付き合った彼女の家に行ったことがない。とても広いお家らしいが写真ですら見たことがない。兄弟にはあったことがあるが、ご両親のお顔も拝見したことがない。別の用事でお母様と電話でお話ししたことはある。ずいぶん経ってからお母様が僕の名前を覚えてくださっていると聞いて嬉しかった。せっかく名前まで覚えてくれたのに。記念にご両親の写真でも見せて欲しいと頼んでみるかなあ。もう永遠に会えない義理のお父さんとお母さん。
小学校の頃、「友達と遊びに行く」といったら「友達、友達ってなんだ!」と怒鳴られたことがあった。あんまり友達と親しくしてはいけないのだということを学んだ。父に「絶対サラ金なんかに手を出すな」と教えられたことがあったが(中学生くらいのときに!)、「友人は一生の財産だ。大切にしろ」と教えられたことは一度もなかった。貧乏な家に育った人だったから生きることに必死でお金が大切だったことはわかりますけど。
僕に友人らしき人がいない理由がもうひとつ。小中学校の頃は気づいたら友人に囲まれていた。人を引きつける面白さなり、かわいさなりがあったのだろう。だから友達を作る努力をしたことがなかった。高校では自分と同じような出来の悪い連中がいつの間にか集まっていた。友人を作らなくては、と初めて思ったのが大学だった。留年と休学をしていてもうあとがなかった。二つのサークルと体育会に入った。同級生は僕より三歳年下だし、何となくよそよそしいものになってしまった。会社の同期は友人なのかライバルなのかわからない。こうして今まで生きてきて僕に電話をくれる人はいない。僕からかけて会いたいという人もいない(対人恐怖で緊張するからっていうこともある)。毎年来る年賀状は五~一○枚くらい。
生まれ変わるなら? 社交的な人がいいに決まってる。そういえば六年も付き合った彼女の家に行ったことがない。とても広いお家らしいが写真ですら見たことがない。兄弟にはあったことがあるが、ご両親のお顔も拝見したことがない。別の用事でお母様と電話でお話ししたことはある。ずいぶん経ってからお母様が僕の名前を覚えてくださっていると聞いて嬉しかった。せっかく名前まで覚えてくれたのに。記念にご両親の写真でも見せて欲しいと頼んでみるかなあ。もう永遠に会えない義理のお父さんとお母さん。