私が大宮担になった理由2021⑥ | シークレットサイン *嵐大宮妄想小説*

シークレットサイン *嵐大宮妄想小説*

嵐さん大好き、サトシックの妄想ブログです。
今日もリグレットと向き合いながら、
主に大宮の腐った妄想小説を書いています。





早朝、いつもより早く目が覚めました。

一段と冷え込む朝。
けれどその分、空気がとても澄んでいる
ように感じました。

着替えて部屋を出ると、ちょうど身支度を
整えた二宮さんが部屋から出てくるところ
でした。

二宮さんは、おひとりでした。
手には鞄と上着を持っていました。

目が合うと、にこっと笑って挨拶をして
くださいました。

「おはようございます」

「おはようございます。お早いですね」

私がそう言うと、二宮さんはちょっと
はにかむように伏し目がちになりました。

「はい。ちょっと早めに出ることにしま
した。朝食はいりません」

「かしこまりました」

お連れ様は…

そう聞きたかったのですが、
聞けませんでした。

朝が来る前に、お帰りに
なられたのでしょうか…

それとも…

私は急に不安に襲われました。

もしかして昨夜のあれは
暗く寂しい夜に私の願望が見せた
夢まぼろしだったのではないかと。

改めて考えてみると、そもそも私は一度も
はっきりと大野さんを見たわけではない。
ただ勝手に、影を大野さんだと思い込んで
いただけなのでした。

こっそり盗み見た二宮さんの横顔は、
心なしか目の周りが赤いような気が
します。

疲れているようにも見えるし、
逆にすっきりしているようにも
見えました。

昨夜、何があったのか。

夜中に二宮さんが会っていたのは
一体誰だったのか。

もしやそれすらも夢だったのか。

ひとり問答を繰り返しながら、
お帰りになる二宮さんを見送るべく
一緒に玄関へと向かいました。

ガラガラガラ…

まだ人々が起きだす前の時間、
シンとした空気の中に、
玄関の引き戸を開ける音が響きます。

「お気をつけて。
またのお越しをお待ちしております」

玄関前でご挨拶をして頭を下げ、
歩き出した二宮さんの足音が
少し遠ざかってから顔を上げました。

その時です。

あっ、と思わず声を上げそうになり、
慌てて口に手を当てました。

民宿の前の海岸沿いの道路。

二宮さんが歩き出したその先に、
大野さんが立っていたのです。

昨夜とは違って朝靄の中、
その姿をはっきりと確認することが
できました。

大野さんは私が見ていることに気付くと、
わざわざキャップを取って、
ぺこっと頭を下げました。

私は動揺しました。

今年に入ってからは、
一度も公の場に姿を現していない
大野さんです。

なのに、こんなにはっきりとお姿を
見てしまっていいのだろうか…

そんなことを考えながら私が茫然と
立ちつくしていると、突然二宮さんが
くるっと振り返りました。

そして、そう…

数年前のあの時と同じように…

しーっと人差し指を唇にあてて、
いたずらっぽく笑いました。

「ま、またのお越しを
お待ちしてますっ…!」

私はそれだけ言って、
再び深く頭を下げました。

心臓がドキドキと音をたてていました。

かなりたっぷり時間をとって
顔を上げた時には、
もうお二人は歩き出していました。

道の先、並んで遠ざかっていく影を
私は心に焼き付けるように、
いつまでも見送っていました。








今回の当宿での一夜が、
お二人にとってどんな意味を持って
いたのかは私には分かりません。

東京に戻れば…

日常に戻れば、きっとそう簡単には
会うことすら出来ないのだろうことは、
私にもなんとなく想像がつきます。

でも、
どこにいても、何をしていても、
おふたりの間にあるものは
ずっと変わらない…

帰り際、並んで歩くお二人の姿を見て、
私はそのように感じました。

もちろん全て私の想像でしかなく、
本当のところは分かりません。

けれど…

もしこの宿が、色々な事情の中で生きて
いるお二人がほんのひととき、なんの
しがらみもない個人に戻れる場所ならば…


『またのお越しを…お待ちしています』


私はこの開店休業状態の小さな宿を、
このささやかな場所を守るために、
いつまでも健康で頑張らなくては。



遠く田舎の漁村に住む大宮担は、
これからも変わらずお二人の幸せを―――

心から願っています。







おわり








ありがとうございました♡