聖徳太子という人物は、歴史学者によっては存在しなかったという。しかし、「和を以て尊しとする。」という言葉や、「十人の方の話を同時に聞き分けて、それぞれの方に適確に回答したという。」伝説は、千年の時を超えて日本人に伝えられてきている。

 それぞれを能々考えると、「和を以て尊しとする。」という言葉は、「人の和」こそが最も尊いものなので大事にしなさい。という意味にも捉えられ、「十人の方の話を同時に聞き分け」とは、十人の方がいれば、同時に同じ意見ではないので、それぞれの意見に耳を傾けなさい。という様にも捉えられる。つまり、それぞれを併せれば、皆で話し合ってそれぞれの意見に耳を傾けて、最終的に「和」となる様に務めなさいとも捉えられるのである。

 これは、例え聖徳太子という歴史上の人物が存在しないとしても、先人達の心の中で、確かに聖徳太子は生きていたという事であり、全ての人は、それぞれ意見を持っているのだから、これに耳を傾けて話し合って決める様な「和」を大事にしなさいという教訓なのだと思う。

 千年の時を超えて先人達から伝えられてきた「和」を尊しとしないとき、日本の歴史は常に混乱に陥ってきている。果たして現在の日本人は、先人達の希望として残してくれた「和」を尊しとすることが出来ているのであろうか。