「なんでよ!」
おれは思わず怒鳴っていた。
[幼なじみシリーズ②]
【すいーと・あんぶれら】
(※BL要素注意)
「怒鳴るなよ、」
彼は--おれの幼なじみは、眉間に皺を寄せて言った。五月蠅いと思ってるのは分かるんだけど。
「おれは一度だって忘れたことなかったのに。アンタはいっつもそうだ。」
「それって独りよがりじゃん。」
おれの視界が歪んで霞んでいく。泣き虫なのが凄く悔しい。泣き顔を見られたくなかったので、おれは部屋を飛び出した。
今日はちゃんと玄関からお邪魔していたので、急いでズックを履く。そしておもむろに、行く宛も無いままに走った。
「--!」
微かにおれを呼ぶ声がする。彼と彼の母親だろう。でも今は走り続けた。
子供の甘い考えでは、後先など気が回らない。飛び出したはいいものの、雨足は強くなっていていて、おれは公園の木の下でうずくまった。
「バーカ。」
迎えに来るのはきっとおれの母親。困ったちゃん、とでも言うような顔をするのだ。一度だって彼は迎えに来ない。……当たり前だけど。
ざわざわ、と木葉が擦れ、更に雨粒が大きくなる。寒さだって並じゃい。でもおれは帰る気にはなれなかった。
「アホー、何処行った!?」
よく通る澄んだ声。お気に入りというカッコいい黒の傘が見える。
おれは嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で、体を木の陰に押し込んだ。涙も雨も分からなくなっていて、最早悲しさすら薄れてはいたのだけれど。
「見つけた、アホ。」
「……アホ言うな。」
顔を伏せたまま返す。すると彼は傘を差し出した。
「風邪引いたらどーすんだ。心配したんだぞ。」
「ん、ごめん」
そのままで謝れば、彼は慌てた素振りを見せた。
「あ、いや、僕こそごめん。オマエは悪くないから……」
「ううん」
「帰ろっか」
「うん。風邪引いたらキミに会えなくなっちゃうもんね。」
おれと彼はゆっくり立ちあがった。一つ傘の下、一緒に帰るときおれはニッコリ笑って言った。
「迎えに来てくれてありがと、嬉しかった。」
彼は優しく笑ってくれた。ちょっとその余裕が癪に触ったから、無邪気な声で付け加える。
「あ、おれたち相合い傘だね!」
ふい、と顔を背けた彼の耳は真っ赤だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
以上幼なじみシリーズ第二弾【すいーと・あんぶれら】でした。
幾つか書き下ろしたので、また上げます!