Short Story..【道】 | 唄う物書きの『小説と吟(コエ)』

ふと思い出せば、懐かしい道、景色。

【道】

最近、目の前の景色がぶれることがある。突然に。
それは決まって今は見ること無き場所だった。
慣れた日常なはずなのに、やはり心はまだ慣れてはいないのだろうか。見上げる空も、全く違う様に見える程。
そして今も未来も知ることが出来ないことが寂しく思えた。
幾度も記憶を剥がしたが、長い間の様々な悲しみ喜びが染み付く場所だ。恋しく思って当然なのではあるが。
見えない山や花火や友が目の前を横切っていく。今までに無い程鮮明に浮かび上がる。
あそこの匂いまで感じる。自然の香りから沢山の思いも記憶も甦る。
そこまで愛着があったのかな。
全部置いてきたはずなのにな。
……嫌な過去も全部。
溜め息は馴染んだ、だが見知らぬ街に吸い込まれて消えた。
昔より冷たい空気を吸って、もう戻れないことを強く実感した。

さよならの数は人より多い。
だから私は"馴れ"を得意とした。
でも、それはただの勘違いだったようだ。
私はまだ子供、
そして寂しがり屋で孤独だったんだ。
思い出に囲まれで初めて一人じゃなくなった。
嫌な思い出の方が多くても、それが私を確立していたのだと思うと、ぽっかりと大きな穴が空いた気がした。

時期外れの粉雪が一粒、そろりそろりと舞降りる。
この場所で初めて迎える冬の到来。
この道はどのように白く染まるのだろうか……?




◇◇◇◇◇◇◇

なんだか無性に昔の情景が重なるんですよね。
ふとした瞬間に、懐かしいなって。今でもその道を歩むかのように。
それが鮮明すぎて、一瞬分からなくなるんです。
こんなに狼狽えたの、直後くらいですよ。夜一人で布団の中で少し泣いた、あの晩くらい。
すぐ慣れたからね(笑)でもやっぱり強がりなんだよね、強がりってふとした時に崩され易いから。