17歳の頃、私は大失恋をした

崩壊している家族関係で、
私はとても愛に餓えていた

自分の心にあいた穴を、
誰かに埋めて
もらおうとしていたのだ

本当は、自分にしか
埋められない穴なのに…


小さな狭い世界の中で…

彼が私の世界の全てだった


食事も喉を通らず、
38kgまで痩せてしまい、
身も心もボロボロだった

彼は留年していたこともあって、
私と別れたのを機に、
学校も中退してしまい、
学校で会うこともなくなった


私は彼に止められていた
タバコをまた吸い始め、

水商売のバイトを始め、

あなたがいなくても
十分楽しんでいると
見せつけるように、
沖縄に旅行もした

必死だ


ある日、
セブンティーンという
雑誌を見ていたら、
「原宿で見かけた素敵なカップル」と彼がかなり大きく載っていた

新しい彼女ができたことを知り、
私は彼に電話して、
とても酷い嘘をついてしまった

妊娠したと…

本当に自分の子なのかと問われ


嘘をついているのに、
その答えが頭にきて

「あんたなんか
二度と会いたくない、
一生会えなくていい」と

捨て台詞を投げ、
ガチャ切りをした


それから少し経って、
彼はバイク事故で
逝ってしまった


事故にあった日、
私がいつも使っていた
手鏡が割れた

嫌な予感がすると話した直後に、
彼が事故にあったことを聞いた

それから1週間後、
私はお風呂に入っていた時に、
電話が鳴った

シャワーで髪を
濡らしていた時だったけど、
コール音がはっきり聞こえた

私はびしょ濡れのまま、
急いで電話に出て、
彼の死を知った

実感がなく涙が出ない

お通夜で、
彼の遺影を見た時に、
やっと涙が出た

遺影は、
私が作ったお弁当を
彼が食べている時に、
私が撮影した写真だった

彼との幸せな時間が
この悲しい現実で、
目の前に映っている

翌日、火葬場で
最後の彼の姿を見る前に、
彼の新しい彼女と
自然と手を繋いでいた

肉体のなくなった彼を見た時、
お互いの手が痛くなるほど
強く握りしめて泣いた
 

亡くなる前から、
彼は学校に来ていなかったから、
私の生活は変わらない

どこかで元気に
暮らしているとしか思えない

食欲もあるし、
普通に友達とも話せる

別れた時の方が、
よっぽど憔悴していた


ただ時々、
いなくなってしまったことを
思い知らされる瞬間は、
堰を切ったように涙が溢れた

ちょうどその頃だったと思うが、不揃いのリンゴたちの
ドラマの中で、
柳沢慎吾の役のお父さん役が
亡くなるシーンがあった

お母さん役の女優さんは、
おそばかうどんを
次から次へと食べ、
どれだけの量を食べているのか
感覚もない様子だ

それを見て、自分と重なった

悲しすぎると
悲しいのがわからない

今、自分がどこにいるのかも
何を感じているのかも
よくわからない

ずっと泣いていられたら
どんなに楽か…

なぜ私は笑っているのだろう

まるで夢の中のように
他人事の毎日…



彼は事故にあった日に、
本当は彼女とデートを
するはずだった

彼女は、どこからか私の噂を聞き、
彼の態度がひどいと
いうことでケンカになり、
会うのをやめたそうだ

彼女と会っていれば、
その日彼は
バイクには乗らなかったそうだ

そんなことを誰かから聞いた

私のせいだと何度も何度も
自分を責めたけど…

これは彼の運命だったんだ
ということもわかってはいた

四十九日で
彼の自宅を訪ねた際に、
彼のお母さんに手紙を渡した

詳細は書かなかったけど、
私が嘘をつかなければ、
彼はあの日バイクに
乗っていなかったことを伝えた

私にはいつか新しい彼が
きっと現れるけど、
息子は代わりがきかないから…
申し訳ないと謝った


後日、お母さんから手紙がきた

これが彼の宿命なのだから、
私のせいではないのだから…

彼の分も幸せに生きてほしいと
書いてあった

出雲大社前のお守りの
ペンダントが同封されていた
 


私は、覚悟を決めた


「反省はしても、

後悔はしない、

私は二人分生きる」

(=めそめそもしない)



「本音で生きる!」に
「後悔しない」が加わり、
ますますパワーアップをした



その想いが糧になったのだが…

ある一面で長い間、
自分にも「嘘」をつき続ける
ことにもなった