自称・城平京信者が再びやって参りました。
以前に『名探偵に薔薇を』で絶望に打ちひしがれ、さて今作ではどんなやりきれない展開を叩きつけてくださるのか…と!
『虚構推理』(城平京)
作品の中ほどまで読んで、これは本当に推理小説なのか?と混乱した。
主人公・岩永琴子は片目が義眼、片足が義足という1つ目1本足の美少女。彼女の裏の顔は妖怪、あやかし、魔などと呼ばれる人ならざるもの達に知恵を貸す“おひいさま”
岩永のパートナーとなる桜川九郎は幼い頃に人魚とくだんの肉を喰った不死の身体。旅行中にカッパと遭遇したことにより入籍直前だった恋人と別れることになる。
そんな九郎の元カノである弓原紗季はとある町の警察で働く交通課巡査。彼女の町では少し前にグラビアアイドルの変死体が見つかり、今はそのアイドルの亡霊と思われる“鋼人七瀬”が鉄骨を振り回して大暴れ。
…などと、登場する言葉のどれもこれも、地に足を着いていない!
城平先生はこんなファンタジー染みた世界で論理的な推理をやってのけようというのか。
それを、やってのけるのである。
ただしそれは真実の解明という意味での推理ではない。
「真実はいつも1つ!」と有名な男の子は言うけれども、同じ推理ものというジャンルで城平先生は真っ向からそれを否定しにかかった。
事件の真犯人も手段も、読者と登場人物はとっくに知っている。
岩永が挑むのは、言葉と心理を巧みに操った“虚構を真実にする推理”である。
ああ言えばこう言う、議会か討論会かという論理の応酬が物語後半の怒涛の展開。
推理小説とはこうあっても良いのか!と驚くと共に、むしろこれはもっと社会的なジャンルなのではないかとも思う。難しいことはわからないけれど。
ところで、この物語にはそれほど絶望感は無かった。
今まで読んできた城平先生の作品の中では軽いだろうという終わり方。
物語で魅せると言うより、手法で魅せる作品なのではないか。
それにしても後に続くような引きはあるけど…。
余談ですが。
城平作品の登場人物はいつも魅力的。『虚構推理』はそんな過去の登場人物たちの面影を感じることが多かったように思います。
岩永の恋愛に対しての猪突猛進具合はスパイラル・アライヴの伊万里を彷彿とするけれど、彼女ほど馬鹿ではなく小さな身体で知略を駆使する姿は理緒ちゃん寄り。
紗季はクールなキャラクターだけど、岩永の言動に感嘆する口調が絶園のテンペストのフロイライン山本を思い出すような。とても漫画的で、小説という媒体で見るのは少し違和感が。
ただし過去を悔やむ姿にはやはりスパイラルの亮子ちゃんの面影も…と、これまでのキャラクターの魅力を踏襲したような、じわっとした楽しさもあり。
そういう要素は是非はあるかもしれないが、私は好きです。
ふぶき
