今日は「産地織元 唯一無二の会 博多2022」@警固神社「東遊の間」にお邪魔しました。




昨年に続き二度目。織りの結城紬・大島紬、染めの友禅、その中でも伝統に胡座をかくことをせず、時代に向き合い和装のアップデートを真剣に考えていらっしゃる産地の老舗業者さんたちの本当にすごい企画展です。






西の大島、東の結城。大島と結城は紬の二大産地です。両方大好き。譲り受けたものを何枚か持っています。大切な着物で、とても気に入っています。

でもですね、この企画展で出会う反物たちは一味も二味も違うのです。

結城紬の最高峰といえば、もちろん手紡ぎ糸を地機で織り上げた本場結城紬。絣模様は小さいほど付加価値が高く、160亀甲の総柄なんていう代物になると8桁のお値段になっても当たり前。そんな作品を前にすると冗談ではなく魂が浮遊する感じになります。「持ってかれる」というのでしょうか、そんな感じ。それは大島紬も同じです。マルキも9マルキだったり、それ以外にも割り込み柄だったり、と超絶技巧で織り上げられた大島紬をみているととても人間の手仕事とは思えず、長い長いため息をついてしまいます。

そういう本場結城紬や大島紬が文化財指定されるのは当然でしょう。そういう技能が国の財産として受け継がれていくことは本当に大事。日本の職人さんのハイスペックな職能はもっともっとリスペクトされるべきだと想うのです。

けれど、産地の業者さんの懊悩も実はここ。職人さんのハイスペックが思うさま発揮された反物はどうなるか…?芸術作品ですよね。もはや庶民の手には届かない高みに上ってしまいます。ここに産地ならではのジレンマがあります。精魂込めて素晴らしい反物を織り上げてもそれが広く遍く行き渡らないなら織る意味がない。

そこで志ある老舗業者さんたちは、本場の味わいをそのままに、けれど流通に乗りやすい価格の反物の制作に乗り出されたのでした。


(左から、結城龍田屋藤貫社長、関織物関社長、縞屋井上社長。産地の老舗です。)



たとえば、結城龍田屋さんの「綿棉(わたわた)」という反物。




糸偏の「わた」は真綿すなわち絹。木偏の「わた」は綿花です。経糸は絹糸(真綿)で緯糸の半分を強く撚りをかけた木綿にすることで、結城縮の風合いそのままに皺になりにくく、手入れも楽な、安価な反物が織り上がります。絣模様もないので動力機で生産量もアップ。でも同じ反物を大量に、ということは絶対になく、経糸は同じでも緯糸の色味を変えることで全く違う反物に仕上げるという細やかな気遣いも嬉しいところ。縞屋の井上社長自ら藍で染め上げたという緯糸を使った「ヒロシの藍(愛)」はなかなかの逸品で心惹かれました(笑笑)。

そして大島紬の名門「関織物」の関健二郎社長自ら糸を染められ、織り上られたという反物たちには従来の大島紬観を全く覆されてしまいました。数ある個性的な大島の中から、関社長が選んで下さったのは、なんとも言えない深みのある「くれなゐ」の無地。大島で無地!これってすごいことですよ。大島と言えば…という織柄の美しさを捨てて反物そのものの風合いで勝負するという潔さ。縦糸は蘇芳、緯糸は泥染大島に使われる車輪梅。華やかな蘇芳とじっくりした車輪梅の色味が縦横の糸として交わるとこんなつややかなくれなゐが生まれるのだと驚きました。車輪梅(テーチ)を使う泥染をすることで何度も洗いにかけた糸で織り上げた反物はあのふわふわの昔大島の肌触り。いつまでも触っていたい感じでした。

昔ながらの本結城も大島紬も大好きだし、その技術は必ず後世に継承してほしい。でもその一方で、着物が日常の衣装になるにはやはり流通から考え直さねばならないのも事実。この難しいダブルスタンダードを解消するべく行動を起こされた産地のみなさまのバイタリティに感服。その心意気溢れる作品たちに会いにいらしてくださいね。

5月29日(日) 10:00-19:00
5月30日(月) 10:00-16:00

*作家さん、業者さんの魂こもった品々、画像は遠慮いたしました。実物はぜひご自身でご覧ください。敷居が高そうで高くない。みなさん、お茶目で面白い方々です。笑笑。




(お三方が並んでいるとわからないけど、実はみなさん巨人族。私、157センチと小さめではありますがこんな谷間になるなんて。爆)



✳︎今日の着物は友人の友人からいただいた上布。今日の福岡33°C。真夏やん。

帯は龍田屋さんの網代柄織り出し八寸名古屋帯。軽くてしっかり締まります。帯留は翡翠。





虹🌈、見つけた!